日本も参加しているCOP(コップ)とは、気候変動などの地球環境について議論する国際会議のことです。一定期間ごとに開催されていて、世界中の国々の代表が集まる大イベントとなります。
2021年は英国のグラスコーで第26回目のCOP26が開催され、2022年はエジプトにて第27回目のCOP27が開催されました。
今回はCOPとは何なのかや概要・歴史などをシンプルに、かつカジュアルにわかりやすく解説していきます。
これからの時代は、あらゆるシーンにおいて環境問題は非常な重要なトピックとなり得ます。COPは環境問題で世界をリードする存在です。この機会に大まかな骨組みだけでも理解しておおきましょう。

COPってどういう意味なの?

まずは最初に、COPの名称の由来や
概要・歴史を簡単にチェックしておきましょうか。

COPとは「Conference of Parties(コンフェレンス・オブ・パーティー/加盟国の会議・締約国の会議」を略したものです。(正式名称は「United Nations Climate Change Conference」といいます。)
何に加盟している国なのかというと・・・
UNFCCCと呼ばれる国際連合の条約です。

UNFCCCとは、
「United Nations Framework Convention on Climate Change/国連気候変動枠組条約 」
ユナイテッド・ネイション・フレームワーク・コンベンション・オン・クライメイト・チェンジを略したもの。ちなみにUnited Nationとは国際連合(国連)のことです。
日本語でいうと「国連気候変動枠組条約」となり、英語でも日本語でもやたらと長くて覚えづらい名称ですよね。簡単にいうと、地球の気候変動・地球温暖化への取り組みといった感じです。
地球の異常な気候変動や環境破壊、温度上昇をどうやって解決していくのか、解決するために何をすべきなのかを協議・決定していくのがUNFCCCなのです。
UNFCCCは、1992~1994年にかけて発足した条約で、パリ協定の母体のような役割を果たしています。約200か国が締結する国際条約です。UNFCCCによってパリ協定も協議・締結されているわけですね。
つまり、COPとは国連が地球環境について開催する国際会議のことです。
「UNCCC/United Nations Climate Change Conference」
COPは「地球サミット」と呼ばれる、国際イベントから始まりました。

「地球サミット」は、1992年にブラジルのリオ・デジャネイロにて開催されたイベントで、深刻化する地球環境問題を議論するために国連の約180か国が参加しました。
史上最大の大会議となった「地球サミット」がCOP1にあたる会議となります。ここからCOPが展開していくのです。
「地球サミット」にて提議された問題とは、
大気保全、森林、砂漠化、生物多様性、淡水資源、海洋保護、廃棄物
など。これらに対する具体的な政策や国際法が必要だと「地球サミット」にて改めて認識されたのです。
環境問題への対策として、国連加盟国が一体となって取り組むべきテーマを3つ宣言しています。
- 環境と開発に関するリオ宣言(持続可能な開発にて自然との調和をはかること)
- 21世紀に向けた具体的な行動計画を設定(アジェンダ21)
- 森林原則声明(持続可能な森林の経営と保全)
これらのテーマが、後にCOPと呼ばれるようになった国際会議のテーマとして引き継がれていきます。
持続可能、サステイナブルなどといった言葉は、最近になってよく聞くようになりましたが、実は1992年以前から度々議論されてきたのですね。
COPの開催地・議長国は毎回異なり、会議を重ねるごとに「第3回会議」「第4回会議」と会議のタイトルがつけられています。「COP」と大々的に呼ばれるようになったのは、 第21回会議のパリ協定「COP21」あたりからです。
そもそもパリ協定とは?脱炭素・カーボンニュートラルが地球温暖化を解決する!
以来「COP22」「COP23」とタイトルがつけられるようになっています。

では、COPの詳細や流れを知るためにも、
歴史的節目となる代表的なCOPをいくつか見ていきましょう。
現在の脱炭素・カーボンニュートラルの基準となっているのは「パリ協定」で定められたCO2削減目標です。「パリ協定」で目標が定められる前は、京都会議で合意された「京都議定書」が基準となっていました。
「京都議定書」とは、1997年に開催された「COP3」京都会議にて合意された内容のことをいいます。
歴史上はじめてCO2排出(GHG/温室効果ガス)に関する国際法が「京都議定書」にて定められたのです。

地球の気候変動・温暖化の要因となっているのがCO2などのGHGの排出量です。
GHGとは、温室効果ガスに分類される、二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、フロン(ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、三フッ化窒素)などの有毒ガスのことをいいいます。
GHG(温室効果ガスの構成比率)

おもに工場や自動車が排出するガスのことで、暖房や調理ガスなど一般家庭から排出されるGHGもあります。人間が吐く息もCO2で、GHGをひとまとめにしてCO2/CO₂(シー・オー・ツー)と総称する場合が多いです。
過度なCO2排出は、気温上昇・大気汚染・オゾン層破壊と自然環境を破壊するとともに、人体にも致命的な悪影響を及ぼすのです。
CO2の濃度と人体への影響

「京都議定書」では、2008年~2012年の5年間でのCO2排出量の規定が定めらましたが、対象が排出量が多い先進国のみ。「不公平だ」と米国が離脱するなど効力の弱さが問題となっていました。
世界のCO2排出量(1950年~1995年)

CO2排出に関するルールは、「京都協定」「Kyoto Protocol/キョート・プロトコール」と呼ばれる有名な国際的合意です。
「京都議定書」はまさにパリ協定の前身となる存在で、欠陥も多かったものの、地球温暖化対策に向けて飛躍的な一歩となったのでした。
まだ、国際協定としての効力が弱かった「京都議定書」は、2000年オランダのハーグで開催されたCOP6では合意に至らず中止となり破綻の危機を迎えます。合意に至らなかった理由として、政治的対立や利害関係の不一致があげられています。
とりわけ際立ったのが、先進国と新興国ではCO2排出量が大幅に異なり、気候変動に対応できる財政・予算面にも明らかな開きがあることです。
すべての国に平等で公平なルールが定まっていないことが、「京都議定書」の大きな欠陥となっていたのでした。そこで、先進国と新興国の格差問題を解決する「ボン合意(COP6)」「マラケシュ合意(COP7)」が制定されました。
合意の内容は、「CO2排出を売買することで排出量の格差をなくす」「途上国で財政難にある国への基金の設立」「先進国による途上国への開発投資」などで格差のバランスをとるものです。
その後も、COPは継続され、時には未交渉に終わることもあれば、新しい合意が成立するなど、改討に改討を重ね右往左往しながら、ようやく2015年のCOP21にて「パリ協定」の成立に至りました。
2015年に協議された「パリ協定」は、翌年2016年にUNFCCCの合意を得て発効。「京都議定書」が生まれ変わる形で気候変動への国際ルールが制定されています。
正式名称:The Paris Agreement(パリ協定)
発効:2016年11月
目的:気候変動・地球温暖化の解決(環境保護・地球の温度を2℃下げる)
加盟国:UNCCC加盟国197か国

「パリ協定」と「京都議定書」の違いは、「CO2削減の義務を負う先進国と負わない途上国」と2つの観点から気候変動へのルールが制定されている点にあります。「京都議定書」の大きなネックとなっていた「先進国と途上国の格差」が解決できる国際枠組みとなっているのです。

パリ協定のルールは大きく3つ。
- 気温上昇率を2℃以下に下げる(1.5℃の上昇率を目指す)
- 各国は5年おきにCO2削減目標を設定、データを報告する義務がある
- 気候変動対策に基づき、途上国・新興国への資金援助を行う
パリ協定のメインとなる最終ゴールは、CO2削減によって地球の気温上昇率を2℃以下(1.5℃)に抑えることです。とくに、CO2排出量が多い先進国は途上国を支援する責任があるとパリ協定では見なされています。
パリ協定のゴールに向けて、先進国は何ができるのか、そして途上国に必要なのは何なのか、より具体的な案を導きだすためにCOPが引き続き協議されているのです。
参照:History of Convention – UNFCCC
参照:Conference of the Parties – UNFCCC

2021年のCOP26で初めてCOPの存在を知ったような
気がする。頻繁にタイトルを見かけて気になってたんだ。
とりわけ大きなイベントだったのかな。

そうですね。これまでのCOPとは違って、
世界的にかなり注目されていました。
ちょうど脱炭素の流れから、広く認知度が高まったのが
COP26からなのです。

これまでは、環境問題といってもニュースやメディア上に存在する遠い世界の話でした。
しかしここ数年、相次ぐ水害や気温上昇・自然破壊への危機感から、環境問題や地球温暖化が身近なものとなっています。身の回りへの変化から他人ごとではなくなってきています。さらに、再生エネルギーの普及が進んでいることもあって、脱炭素・カーボンニュートラルへの意識が高まってきているのですね。

脱炭素や再エネなんか、国内でも当たり前に見聞きするようになっていますよね。
世界の脱炭素への流れを受けて、これまでになく注目を集めたのが2021年のCOP26です。COP26は、2021年英国のグラスコーで10月31日~11月13日にかけて開催されました。

ボリス・ジョンソンの呼びかけに始まり、米国からはバイデン大統領、EU委員長、日本の岸田首相、インドのモディ首相など130か国の首相・大統領がじかじかに集結。
開幕から、最初の2日間は「世界リーダーズ・サミット」といって各国首脳会談が行われました。

200か国が参加、国の代表や派遣員、企業、機関・団体など参加者数は約4万人、COP史上の最高記録、最大規模のイベントとなったのです。
岸田首相は、アジア圏のカーボンゼロに向けて5年間にわたり約1.1兆円の追加支援金を表明。もともとパリ協定では、先進国から途上国へ1,000億ドル(約11兆円)が拠出される予定でしたが、不足していると訴える途上国が多かったとのこと。
支援金が求められる最も大きな理由が、石炭火力発電の稼働停止です。安価な石炭から、初期費用がかさむ再エネへの移行はかなり厳しいということですね。
ほとんどの先進国が、COP26にて支援金の追加目標を表明する結果となっています。
米国は毎年の支援金を4倍の30億ドル(3,400億円)に増やし、ドイツは個別で年60億ユーロ(8,000億円)、EU全体では50億ドル(5,600億円)、英国は116億ポンド(1兆8,000億円)の増額が約束されました。
COP26においても、やはり論点が先進国と途上国にて食い違う傾向にあります。積極的に脱炭素を実行したい先進国と、時間がかかり限界があるとする途上国との間にはズレが生じてしまうのです。

先進国と途上国とのズレを少しでも縮めていくことが
今後のCOPの課題となっています。
EVランキング 世界をリードする電気自動車メーカー、EV・PHEV・FCVはこれだ!

それで、2022年のCOP27では
どんなことが議論されたの?

では、最初に11月に開催されたCOP27の詳細を
見てみましょうか。

2022年、11月6日~18日にかけて第27回目となる「COP27」が開催されました。
COP27の開催地・議事長国は、エジプトのシャルム・エル・シェイクという都市。ちょうどエジプトと中東の接点となるシナイ半島にあるシャルム・エル・シェイクは、アラビア語で「平和の都市」という愛称で親しまれている地域になります。
エジプト政府は、COP27の開催に先駆けて「Egypt Vision and Mission/エジプトの未来図と使命」を発表しています。
持続可能な開発目標として、「Mitigation/温暖化の緩和・軽減」「Adaptation/目標に向けての適応力」「Finance/目標を果たすための資金」「Collaboration/パートナーシップ・協調」と4つのテーマを提示しています。

COP27では、従来のテーマである気候変動への対策を協議するとともに、先進国による途上国への支援を促す(未払い金を催促する)ことがメインのトピックとなっています。
2021年から2022年にかけて災害に戦争、インフレ・エネルギー高と続き、激動の時代を迎えています。もともと財政が不安定な多くの途上国では、すでに農作物や住居、インフラ、人命が危機にさらされているのです。

途上国におけるダメージは、先進国で暮らす私たちの想像を超えるほど深刻な状況にあるのです。飢餓に苦しむ国もあれば、たったコップ1杯の水が入手できない地域もあります。
エジプトは、アフリカ・中東をリードする大国でありながらも、まだ発展の過程にあり、その他多くの途上国の例にもれず数々の難題を抱えています。
エジプトがCOP27の議長国として、声をあげているのが「先進国からの支援が約束どおりに行われていない、十分な支援が得られていない」ことです。

支援が得られていないってどういうことなの?

先進国は、途上国に対して最低でも年間1,000億ドル(約11兆円)の
拠出金を支払う取り決めになっているのですが、達成されていないのです。
気候変動を要因はCO2排出量の増加です。つまり、気候変動を引き起こしているのはCO2排出量が多い先進国だといっても過言ではありません。パリ協定でも、先進国は途上国を支援する責任があると見なしています。
先進国の方でも途上国への支援に合意しているものの、2020年も2021年もあらかじめ設定されている拠出金額は未達。途上国としては、「えっ?話が違うじゃないか」という状況になっているわけです。
エジプト政府の見解では、すでに気候変動の被害を受けている国がパリ協定の目標に向かうためには、支援が欠かせないとしています。「ただの約束ではなく、実践に移すことが大切だ」と資金調達の構造転換の重要性を浮き彫りにしています。
ただ、実際に先進国政府が拠出金を支払うだけでは、途上国と先進国の溝を埋めることはできないと以前から指摘されていました。
COP26では先進国企業の途上国への投資が解決のキーワードになると、企業同士のマッチングを促進しています。エジプトでも、グリーンゾーンと呼ばれる民間向けの交渉の場を設けています。
COP27 グリーンゾーン

グリーンゾーンは一般市民も参加できる自由な交渉の場で、東京ビックサイトや幕張メッセなどの展示会のようなイメージですね。UNとは別でエジプト政府が主催となります。
UN主催のイベントはブルーゾーンで開催されます。
他にもコマーシャル向けのパビリオンというスペースが設けられていて、COP27ならではの特設会場です。日本企業もパナソニック、大成建設、日立グループ、三菱重工などの20社が参加しています。

日本の岸田首相は不参加。小池都知事が代理で参加しています。
ひとまずは、途上国向けの拠出金に対する先進国の対応が
COP27の焦点となっています。
ロシア・ウクライナ対立によって、世界の脱炭素への動きは様相が一転してきています。
これまで、再エネやEVの導入で世界をリードしていた欧州は、周知のごとく脱ロシアの関係からエネルギー難に陥っています。欧州の存在がCOPの信頼度を上げる効果を果たしていたため、不安に思う国も多いようです。
ドイツ、オランダなどは、ガス火力発電の代替えとして何と最もCO2排出量が多い石炭へと逆戻りです。インフレ、エネルギー高、サプライチェーンの停滞、リセッションへの懸念から、いったんはCO2削減のコミットを留保する国も出てきているようです。
しばらくは脱炭素への動きが減速すると予想されています。しかし一方では、今回のロシア・ウクライナ問題から再エネへの移行が加速するとの見方もあります。
いずれにしても、欧米はいい加減にウクライナへの武器提供ではなく終戦交渉へと舵を切り替えないと、財政は底をつき再エネどころではなくなってくるでしょう。COP27をきっかけに、過熱しすぎたウクライナへの方向性を見直す時期にきているのかもしれませんね。

