EU 天然ガス供給過剰!?予想外の暖冬で満杯のガス貯蔵と行き場のないタンカー

欧州の天然ガスは予想外の展開を見せています。欧州では例年よりも暖かい冬を迎え、ガスの需要が急低下。予想外にガスの貯蔵が満杯となったのです。

世界の約10%にあたる60隻のタンカーがガスの引き渡しができずに、欧州近辺をさまよっているとのことです。

経済制裁のからみからロシアガスの供給量は大幅に減少しています。今冬に備えて、欧州は世界中から天然ガスの輸入を急いでいたため、世界中からタンカーが押し寄せている状態です。

ほぼ100%の貯蔵率を確保している欧州では、暖冬によってエネルギー危機が回避できるかもしれないとの声も聞かれています。10月27日のタイミングでエネルギーLABにて、欧州のガス事情を詳しく調査してみました。

世界の10%のLNGタンカーが欧州に!

ロシアのウクライナ侵攻によって欧州はエネルギーの脱ロシアに踏み切り、米国のLNGを契約。ロシアはロシアで、欧州がストップをかける以前から、先手をうって供給停止を開始してしまい、6月以降は大幅に供給量が減少しました。

EU委員長
EU委員長

EUはこれ以上ロシアに依存できないわ。

米国に依存先を変えなければ。

バイデン大統領
バイデン大統領

この時を待っていたよ。

米国のガスにしておけば、とにかくEUは問題ない。

(やっとEUとのガス契約に漕ぎついた!)

プーチン大統領
プーチン大統領

ふん、そうくると思ったよ。

何なら早めに、ガスを止めておこうか。

慌てた欧州は、米国をメインに世界中からLNGの輸入をとりつけ、緊急で依頼を受けたLNGタンカーが一斉に押し寄せる結果となったのです。

もともと巨大規模のパイプラインにてロシアからガスを輸入していた欧州は、十分なLNGポートや供給設備を持ちません。大量のLNGを受け取るためのインフラ設備がないのです。

今後ガスパイプラインからLNGへと移行するにあたって貯蔵用インフラの準備をしているものの数年はかかると見込まれています。

加えて、ウクライナ侵攻以来、冬のガス不足を懸念していた欧州は、夏の間にせっせとガスの備蓄に専念していました。

ショルツ首相
ショルツ首相

これはやばい。とにかく寒くなる前に、暖房用のガスを貯めておかねば!

バイデン大統領
バイデン大統領

大丈夫。大丈夫。

米国から出来るかぎりのLNGタンカーを送るから。

(これで天然ガスの輸出額が増える!)

ちなみに、備蓄用のガスは、結局は中国からロシアガスを輸入していたとの噂です。中国はロックダウンで、ガス需要が減少していたことから、安く購入したロシアガスを欧州に高く売ってひと稼ぎした模様。

すでに93%の備蓄ガスで満たされていた欧州の貯蔵設備は、すでに100%満杯。

しかも幸か不幸か暖冬でガス需要が低下したため、思ったように備蓄してあるガスが減らないわけです。待ちに待ったタンカーが目の前にきていても受け入れるスペースがないときています。

欧州周辺をさまようLNGタンカー

世界には641隻のLNGタンカーがあります。そのうち10%にあたる60隻のタンカーが欧州のノースウエスト、地中海、イベリア半島にて停泊中、あるいは停泊場所を確保できずに周辺をうろうろしながら荷下ろしを待つ結果となっているのです。

参照:Wave of LNG tankers in Europe – CNBC

LNGタンカーのコストが倍増

「欧州のガス貯蔵が満杯!」

「押し寄せるLNGタンカー!」

と聞けば、「これはガス余りで天然ガスは下がるな」と判断しがちです。しかし、ここに落とし穴があって、LNGタンカーが荷下ろしを済ませるまでが輸送のコストとなっている点です。

つまり、60隻のLNGタンカーが荷下ろしを順番待ちで待機している間に、欧州が払うガスの輸送料はどんどん拡大していくのです。

EU委員長
EU委員長

ふーっ。ひとまずガスは満杯。

ガスの価格も下がっている。

EUは今冬を何とか乗り越えられそうね。

LNG船長
LNG船長

いや、マダム、身動きできないんで困ってるんだ。

通常のチャーター料金に追加料金もらわないと

ガスは渡せないね。

LNGタンカーは、全長250m~350m、幅50m~60m、重さ15万トン~25万トンと巨大(東京タワーと同じぐらいの大きさ!)です。LNGタンカーを動かすだけでも多大な費用がかかります。

LNGタンカーの輸送料金はチャーター料金といって、1日いくらで計算されています。10月のチャーター料金は1日10万ドル(約1,500万円)で、ここ数日における遅延から、チャーター料金は5倍の50万ドルに跳ね上がっているのです。

EU委員長
EU委員長

・・・はっ?・・・追加料金?

ショルツ首相
ショルツ首相

インフレが・・・。ガス料金が・・・。

マクロン大統領
マクロン大統領

むむっ。判断を誤ったか・・・。計算外だ。

バイデン大統領
バイデン大統領

あー忙しい忙しい。中間選挙で本当に忙しいんだ。

LNGの件は、また後日ね。

プーチン大統領
プーチン大統領

ぷっ。言わんこっちゃない。

だからノルドストリーム稼働しようかって・・・。

世界の10%のタンカーが欧州で足止めされているということは、他方面へのタンカー不足につながり、これがまた値上げに輪をかけたとのことです。このような状況はタンカー史上初めてで、欧州における値上げからアジア方面のチャーター料金も2倍以上に値上がりし始めています。

寒波が押し寄せればガス不足も

欧州のガス供給が過剰な状況にあることをうけて、天然ガス価格は5ドル台まで下落、6ドル前後で推移

天然ガス先物(日足チャート)

10月24日のNYMEX天然ガス先物は4.75ドルの安値をつけ、8月の高値10.02ドルに比べて半額以下に落ち込む場面もありました。

欧州ガス先物も8月の342ユーロから100ユーロと、約3分の1に下がっています。EUとしては、ちょっと安堵のひと息をつく場面になっているでしょう。

しかし、ここで考慮したいのがLNGタンカーにかかるコストが次第にガス価格に反映されるはずだということ。LNGタンカーが航海する期間はおおむね17日から、長い時で30日以上かかるとのこと。タンカーにかかるコストだけでも・・・・莫大です。

プラス値上げ要因となるのが、アジアでは例年以上の寒さやチャーターコストの値上げからガスの価格が上昇しているということ。

冬は始まったばかりです。欧州に、もし寒波が訪れるならば、急スピードでガスの備蓄は減少に向かうと予想されています。

仮に、寒波が訪れないとしても欧州の貯蓄設備が十分でないため、12月~3月にかけて欧州がガス不足に陥るシナリオが現実的になってきます。また、ガス価格のプライスキャップ案への報復として、ロシアガスの大幅減産がガス価格を押し上げる可能性もあります。

市場では、欧米の経済制裁に対するロシアの報復があるはずだとの見方が優勢。

現在のガス価格の落ち込みが、ほんの一時的な現象だと見るならば、今が絶好の買いのチャンスだといえるでしょう。

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まとめ

もし、EUが従来のガスパイプラインからガスを調達していたとすれば、いったいどれだけ巨額のコストが削減できていたことでしょう。そのコストを再エネ投資に回していれば、エネルギー自立・脱ロシアも早い段階で本当に実現可能だったかもしれません。

現在のEUは、莫大なLNGタンカーへのコストと新たなLNGインフラへのコスト、さらにウクライナへの支援金と計り知れないほどの支出を抱えている状況です。いくら経済大国であるとはいえ、EUの財源も無尽蔵というわけではありません。いつか限界がきます。

EUが陥ってしまったエネルギー難の迷宮は、ロシアの怨念からくるものなのか、はたまた米国のLNGの罠にはまってしまったのか、いずれの場合でも視点を全く変えた政策が緊急で必要な段階にきているのではないでしょうか。

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