水素とアンモニアは、カーボンゼロ・脱炭素において非常に重要な役割を果たすエネルギーです。
両方とも、地球上に豊富な資源であるうえにCO2を排出しない点で注目されています。日常的な使用にあたっては、高度なテクノロジー技術と高いコストを要するため、現時点ではまだ開発の過程にあるエネルギーでもあります。
徐々に電力やEVの燃料として普及し始めているところで、再エネ投資の一環として、興味を持つ投資家が増えてきているようです。
今回は、新時代のエネルギーといわれる水素・アンモニアについて特徴や仕組み、グリーンとブルーの違いなどをわかりやすく解説していきます。ぜひ、この機会に目を通してみて下さい。
新しい時代のエネルギー「水素」とは、
ほぼ無限に存在する元素で、水や海水・空気・人体、金属やガスなど多くの物質に含まれています。水素と酸素を化学反応させることで熱エネルギーが発生し燃料として使うことができます。
水素エネルギーは、燃焼してもCO2を排出しない点で着目されたエネルギーです。地球の70%は海水などの水分で構成されています。いくらでも入手可能な豊富なエネルギーとして開発が進んでいるところです。
水素の特徴は、酸素と結合させると「電気」と「水」を発生させることです。
水素からどれだけ電気を作ったとしても、「水」しか発生しないので最高にクリーンなエネルギーなのです。

水素から創出した熱エネルギーは、自動車や輸送機の燃料電池として、家庭用・産業用の電力として使うことができます。
しかも、水素の発熱量はガソリンの約2.7倍。ハイパワーのエネルギーが創出できるため、ロケットの燃料としても使われています。
大量の水素が容易に創出できて、長期間保存できる技術が確立すれば、すべての国においてエネルギーの自給率が高まるわけです。水素は、いわばエネルギーの救世主的な存在なのです。
石炭・原油・天然ガスなどの化石燃料は、資源に限りがあるうえにCO2を排出します。脱炭素・カーボンゼロを実現するためにも、水素は化石燃料にかわる新しいエネルギーになるといわれています。
太陽光や風力発電のように、天候に左右されず安定したエネルギーが供給できる点も水素の大きなメリットです。
現在、水素はさまざまな方法を使って製造されていて、おもに化石燃料から製造する方法と、化学プラントで発生する水素が使われています。これまでの方法では製造過程でCO2が発生してしまうため、今後は製造過程にてCO2を回収する方法や、再エネ由来にて水素を製造するための技術開発は国内・海外で進められています。
IEAの今後の水素エネルギー需要の見通し

国際エネルギー機関IEAのNet Zero Emissionシナリオでは、2030年以降に発電の分野において水素の需要が大幅に拡大するとのことです。輸送・自動車分野では、まず商用トラックをメインに水素燃料の導入が進むとの見解です。
最終的に2050年には、水素のエネルギーシェア率は約60%にまで成長するだろうと予想しています。

また、IAEA(国際原子力機関)では、原子力から低コストで大量の水素が製造できることが報告されています。エネルギー高が深刻な欧州・英国などで、原子力を応用した水素エネルギーの開発も進んでいるとのことです。

水素が一般的に普及していくためには、
低コストでの水素エネルギーの開発がキーワードとなっているようです。

そして、水素と並んであらゆるエネルギー問題を解決するかもしれないのがアンモニアです。
もう1つの新しいエネルギー「アンモニア」とは、
空気や土壌、植物や生物、人の老廃物などにも含まれているアルカリ性の成分です。主な用途は肥料で、比較的に入手が容易。燃焼してエネルギーとして使えることがわかり注目されるようになりました。
肥料として使われているアンモニアは、人工的に製造された合成アンモニアです。合成アンモニアの製造には、窒素と水素が使われているため、水素エネルギーとアンモニアエネルギーは混同され、一緒に製造されることが多いようです。
アンモニアは、天然ガスなどの化石燃料や再エネから水素のように製造することができます。
燃焼してもCO2を排出しないクリーンなエネルギーで、水素に比べると安価に製造できることが大きな特徴です。
~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁.png)
また、アンモニアは石炭などの火力発電に混焼することでCO2を削減する働きがあり、エネルギーとしてだけではなくCO2吸収素材としても注目されています。
燃焼時間が長いため、船舶用エンジン・ディーゼルの代替えや、工業・産業用の発電方法として開発が進んでいます。
現時点では、世界全体でのアンモニアの用途は約80%が肥料です。残り20%が化学製品の原料で、エネルギーとしてのアンモニアはまだ微々たるものです。
これから、将来有望なエネルギーとして期待され、米国・日本・サウジアラビア・オーストラリアを筆頭に、世界中の国々で開発が進められています。

2020年に、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)とサウジアラムコで提携し、世界初のブルーアンモニア輸送の実証試験が開始されました。
資源エネルギー庁のアンモニアエネルギーの調査では、2030年には船舶用・工業向けに利用拡大が進み、グリーンアンモニアの製造技術が確立されるだろうとの見解。2030年~2040年あたりでの一般普及に向けて、国内でも低コストで安定したサプライチェーンの構築に取り組んでいます。

水素やアンモニアは、人体や自然環境への危険リスクが高い
原子力発電にかわるエネルギーとしても期待されているのです。


グリーン水素とかブルー水素とか聞くけど、あれって何なの?

エネルギーのCO2排出量によって、グリーン、ブルー、グレーと分類されているのですね。

水素とアンモニアは、あらゆる方法で製造が可能です。原料に何を使ったか・どうやって製造したかによって、クリーンエネルギーとは見なされない場合があります。
製造方法・再エネ由来かどうかに応じて、水素とアンモニアはグリーン、ブルー、グレーのランクで分類されてい、ます。(バイオマスも様々な製造方法があるため分類されています。)
- グリーン → 完全にクリーンなエネルギーでCO2排出がゼロに近い
- ブルー → CO2を排出するが製造過程で回収・貯留される
- グレー → 化石燃料由来でCO2排出量が多い

欧州では、2021年12月に最初のグリーン水素のストレージタンク(by Iberdrola)が、欧州最大規模の水素プラントから輸送されました。

グリーン水素
太陽光・風力などの再エネ電力と水を電解させて製造した水素のこと。CO2の排出量はほとんどゼロで完全にクリーンなエネルギーです。
ブルー水素
石炭・天然ガスを水素を製造。発生したCO2を回収・貯留します。ブルー水素でも、脱炭素への効果は高いとみなされています。
グレー水素
CO2を排出する水素エネルギーです。脱炭素への効果は期待できません。

グリーンアンモニア
太陽光・風力などの再エネ電力で水を電気分解して水素を創出、さらに窒素を加えてアンモニアを製造する方法です。CO2はほぼゼロに近いクリーン・エネルギーです。
ブルーアンモニア
天然ガス・石炭などの化石燃料から水素のみを抽出して、窒素と結合させアンモニアを製造。発生するCO2を地中に貯留する方法です。
グレーアンモニア
石油・石炭どどの化石燃料から、従来どおりに製造したアンモニアです。CO2を排出するため、クリーンエネルギーには分類されません。

まずはブルー水素・ブルーアンモニアの普及拡大が目指されています。
最終的なゴールはグリーン水素とグリーンアンモニアです。


例えば、国内ではどんな企業が水素・アンモニアのエネルギー開発に着手しているの?

国内では以下のような企業が水素・アンモニア関連の開発に力を入れています。ぜひ、この機会にチェックしてみて下さい。
2025年の大阪・関西万博では、2MWの巨大ガスタービン(IHI)でアンモニア燃料のモデルを発表する予定です。IHIはサウジアラムコとの協業で、世界初のブルーアンモニア製造の実証試験も行っています。
経済産業省とアブダビ国営石油会社(アラブ首長国連邦)は、燃料アンモニア技術開発で提携。東芝は発電用の水素燃料電池をすでに提供開始、トヨタは水素燃料電池の自動車(FCEV)を製造開始しています。
さらに、東北電力と東芝・岩谷産業は、世界最大規模の水素製造施設「FH2R」を2018年に建設開始、2020年に完成させています。「FH2R」で発電した電力は福島や東京への供給される予定です。
燃料資源が乏しく、太陽光や風力で十分な国土を持たない日本では、他国をリードするペースで着々と水素・アンモニアの開発を進めています。再エネ関連に投資するなら、水素・アンモニアはまだあまり知られていないため狙い時のテーマだといえます。再エネに関心がある方は、今のうちに手をつけておいてはいかがでしょうか。

