NYダウが大幅安、日経平均急落などとネガティブなニュースがあっても、最近ではあまり驚かなくなってきました。
加速するインフレと相次ぐ利上げ。日本国内のインフレ率は際立って高いわけではないものの、20年ぶりの円安や賃上げ停滞を考慮すれば、すでに深刻なインフレ状態にあるといえます。
日銀の利上げも時間の問題かと思われる中、世界ではインフレ・利上げが引き起こすスタグフレーションやリセッションが危惧されています。今後はインフレ、リセッションに対応できる投資計画を視野に入れておいた方がよさそうです。
では、どんな銘柄がインフレやリセッションに打ち勝っていけるのでしょうか。今回は、あの著名な投資家バフェットが購入しているエネルギー株をご紹介したいと思います。どうぞ最後までお付き合い下さい。

もし、これからインフレが進んで、スタグフレーションやリセッションに突入したらどんな投資なら生き残れるのかな。

投資に絶対というのはないのですが、米国の投資家バフェットから何かヒントが得られるかもしれませんね。
まずは、そもそもスタグフレーションやリセッションとは何なのか、簡単にご説明しておきましょう。
スタグフレーション
stagflation(スタグフレーション)とは、
- Inflation(インフレーション) → インフレ、物価の上昇
- Stagnation(スタグネーション)→ 景気停滞、景気後退
が動じに起きることをいいます。2つの単語を合わせた経済用語です。
リセッション
Recession(リセッション)とは、
国全体、地域全体、あるいは世界的な規模で経済状況が悪化することをいいます。不況、不景気、経済恐慌のような状態です。
2023年に入ってから、原油・ガスなどのエネルギー高を筆頭に今世界中が深刻なインフレーションに直面している状態です。
各国の利上げが進むことによって、スタグフレーションを引き起こしリセッションに陥る可能性があると指摘されています。

そこで、過去のリーマンショックやコロナショックを、上手く利用して資産を増やしてきたバフェットならどうするか気になるところです。
バフェットこと、Warren Buffett(ウォーレン・バフェット)は米投資会社Brchire Hathaway(バークシャ・ハサウェイ)のCEOです。今年92才で現役、株式投資で増やした総資産は90兆円を超えるといわれています。

11才で初めて株式を購入し、新聞配達・草刈り・買い物代行・スロットマシーンの修理販売など、それこそあらゆる方法で貯めた資金が100万円。19才の時です。
100万円で始めた株式投資は30代~40代にかけて7憶円に倍増。資産家・トップ企業家の仲間入りを果たします。世界中の投資家から崇拝されている存在で、熱狂的な信者も少なくないのです。
Berkshire Hathaway 公式サイトのトップ画面

https://www.berkshirehathaway.com/subs/sublinks.html
世界の時価総額ランキングではいつも5位~10位にランクイン。成功する以前と同じ家に住み、食事はファミレスやマクドナルドを愛用しているそうです。公式サイトは今どきテキストのみで完結するという驚きのシンプルさ。(世界中のメディアがバフェットや会社を勝手に紹介するので必要ないのですね)
まさに、バフェットは使うべきところには使い、不要なものには1セントたりとも出さない倹約家でもあります。ちなみに、親友はマイクロソフトのビル・ゲイツです。(いったいどんな会話をするのでしょうか…)
バフェットが株を買ったり売ったりすると、世界中の投資メディアや新聞が大々的に報道します。バフェットが買った銘柄はいきなり高騰、同様にバフェットが売った銘柄は瞬く間に売られていく傾向にあります。
いわば、バファットが買ったり売ったりする動向そのものが、初心者~大手ヘッジファンドのマネージャーまで幅広い投資家の指標・憧れとなっているのです。

ちなみに、バフェットは最近ではどんな銘柄を購入しているの?

バフェットが購入した銘柄を参考までに見ておきましょう。
企業名 | Ticker | 業種 | 注目ポイント |
Occidental Petroleum オクシデンタル・ペトロリウム | OXY | エネルギー 原油・天然ガス | 原油高の恩恵を受け、 2021年後半から上昇、高値圏にある |
Chevron Corporation シェブロン・コーポレーション | CVX | エネルギー 原油・天然ガス | 原油高の恩恵を受け、 2021年後半から上昇、高値圏にある |
Activision Wizzard アクティビジョン・ウィザード | ATVI | エンターテイメント ビデオゲーム | マイクロソフトが買収を進めている 1月に下落、2月以降は高値圏で推移 |
Apple アップル | AAPL | IT機器・サービス PC・スマホ・タブレット | バフェットポートフォリオ1位 2021年11月以来の安値圏にある |
HP Inc ヒューレッドパッカード | HPQ | IT機器・周辺機器 PC、プリンター | 段階的に堅調な上昇を続けている バフェット購入後に大きく上昇している |
Paramount Global パラマウントグローバル | PARA | エンタテイメント オンラインストリーミング | 約1年前に一時的に急上昇している その後は安値圏で推移 |
General Motors ジェネラル・モータース | GM | 大手自動車メーカー ビュイック、キャデラック | 近年はEVの開発に注力している 2023年は下降基調 |

バフェットが購入した株の中でも、とくに注目されているのが原油関連です。
2023年に入ってから2月にOccidental Petroleum(オキシデンタル・ペトロリウム)に7,000万ドル、3月にChevron(シェブロン)に約1兆ドルの投資を行っています。両方ともすでに高値圏に達していたため、このニュースが報道された時は「バフェットが高値圏にある原油株を買った!」と騒がれました。
さらに特筆すべきなのが、その後も数回にわたってOccidental Petroleum(オキシデンタル・ペトロリウム)を買い増ししていることです。
ここで疑問となるのが、なぜバフェットはこの時期に原油株にこだわっているのかということです。原油価格はすでに高騰中です。もともとバフェットは長期投資の極意・巨匠であり、そもそも高値圏でのエントリーはバフェットの手法に反するともいえます。
各メディアでは「原油価格はまだまだ上昇するのではないか」との見解があがっています。
WTI原油の価格

出典:https://www.investing.com/equities/occidental-petro
6月に入ってからも、原油の供給不足への懸念はまだ続いています。6月9日には123ドルの高値をつけ、以来117~120ドルあたりで推移しています。ここにバフェットが原油株を買い増した理由が伺えるのです。
つまり、バフェットはおそらく「原油高はまだまだ続く」と予想している(?)のではないでしょうか。
ある意味、「原油価格がまだ上昇する」と予想することは「インフレが長引く」イコール「ロシア・ウクライナ問題が長引く」ことの裏付けでもあります。
もしかしたら、バフェッとは「ロシア・ウクライナ問題は長引く」と見ている結果なのかもしれません。

ただし、ひとこと付け足しておくと、バフェットは「相場がどうなるかは誰にもわからない、相場予想などしない。」と昔から言っています。
エネルギー株でも状況によっては、インフレ時やリセッション時にその他多くの株と一緒に下落しきってしまうこともあります。要は現在の市場の低迷が何からきているのか、その要因を探ることが大切です。
例えば、現在のインフレ・リセッションはエネルギー価格の高騰がおもな原因です。インフレを抑えるべく各国の中央銀行は躍起になって、今利上げを実施している段階です。とうとうEUも利上げを決意せざるを得ない高インフレを記録してしまいました。
2023年3月政策金利

出典:https://www.nli-research.co.jp/
このまま利上げが進めば、景気後退につながってしまいます。景気後退となれば当然、多くの金融商品がことごとく下落することが予想されます。市場心理の悪化からますます悪循環で景気後退がすすみ、とうとうスタッグフレーション・リセッションの到来です。
もし、今後も原油供給が不十分で、一定以上の在庫が確保できない場合は、その他多くの金融商品が暴落する中、唯一の稼ぎ頭となってくれる可能性があるのです。
原油価格は今後どうなる?2023年~2023年 プロの原油価格予想!

確かに、バフェットが原油関連を買うのも納得だね。バフェットが買ったエネルギー株は日本でも買えるの?

米国株を取り扱う証券会社にて購入できますよ。例えば、楽天証券やマネックス証券は銘柄数が多いので探しやすいでしょう。


- Ticker: OXY
- 1年間の騰落率: 129.91%
- 配当金: 0.52ドル

出典:https://www.oxy.com/operations/essential-chemistry/sustainability/
Occidental petroleum(オキシデンタル・ペトロリウム)1920年設立、米国テキサス州に拠点を構えるオイルと天然ガスのプロデューサーです。100年以上の実績を持ち、米国・サウジアラビア・北アフリカを中心に炭鉱から輸送までを行う大手系です。
米国のオイル開発の半分以上を占める、ペルミアン・ベイシンにて大半の原油を生産、ニューメキシコをつなぐパイプラインの建設なども行っています。近年ではドローンによる現地調査やCO2を地中に回収・貯蓄する技術に力を入れゼロカーボンに貢献しています。

出典:https://www.1pointfive.com/mission
最近開発された、空気中からCO2が摘出できる「1PointFive」という最新技術が注目されています。原油・天然ガスの分野では全米24位と規模で負ける部分があるのですが、時世代に向けての開発では先駆的存在です。
5月の時点で、バフェットが買い増したOccidental株はトータルで590万株、もともと保有していた株と合わせると1憶4230株。Occidental全株式の15.2%(約88憶ドル相当)となります。
これを機のOccidentalは、バフェットのポートフォリオのトップ9位にランクインすることになりました。


- Ticker: CVX
- 企業名: Chevron Corporation(シェブロン・コーポレーション)
- 1年間の騰落率: 64.71%
- 配当金: 5.68ドル

シェブロンは、米国を代表するエネルギー会社の1つ。1879年設立、約140年の歴史を持ち、カリフォルニアを本拠地に180か国で展開している超大手です。1932年から現サウジ・アラムコと取引開始、2つの世界大戦でも重要な役割を果たしました。2021年後半からコロナ回復とともに上昇、2023年以降は飛躍的に高値を伸ばしています。
オイル開発・精製・輸送、ガソリンスタンドの経営を主軸に、天然ガスや精製オイル、化学品など手掛けています。海洋開発に強みがあり、3000マイルのパイプラインを保有。近年の脱炭素の流れから、航空機向けローカーボンのオイル、水素・アンモニアなど再エネの開発も行っています。

出典:https://www.chevron.com/about/history
シェブロンは何回か社名変更をしていて、最初の会社名はPacific Coast Oil Co.(パシフィック・コーストオイル)谷合の小さなオイル精製所としてスタート。当時の風景が会社のポスターに残っています。
2020年の後半からバフェットは徐々に購入を開始。2021年になって想定以上の利益が出たため一旦半分を手放しています。
ところが2023年に入り、原油高が進むと判断したバフェットは再び買い戻しを開始します。3月~5月にかけて買い増しが行なわれ、原油投資の規模は4兆円に至るとのことです。


出典:https://www.investing.com/equities/gen-motors
- Ticker: GM
- 1年間の騰落率: -41.61%
- 配当金: なし

出典:https://www.gmheritagecenter.com/
General Motors(ジェネラル・モータース)は1908年設立、デトロイトを本拠地とする老舗系自動車メーカーです。もともとは複数の自動車メーカーが統合してGeneral Motorsとなり、20世紀のガソリン車をリードしてきました。

日本でも外車ファンによく知られているのが、Buick(ビュイック)、Cadillac(キャディラック)、Pontiac(ポンティアック)などです。自動車本体のみでなく、オートパーツでもグローバルに展開しています。
近年ではEVの開発に注力しており、日本のHondaと共同で2024年にEVブランドを立ち上げる予定です。Microsoftとは自動運転で提携。さらに、韓国のLGElectronicsと電池の開発を行い、Ulttium Cell(アルチウム セル)というベンチャーカンパニーを設立しています。
General Mortorsの場合は、原油株というわけではないのですが、原油高が落ちつくとすれば、EVに市場の関心が集まる可能性があります。バフェットは、5月に価格が下がりきったタイミングで購入しています。バフェットの心憎いヘッジ効果が読み取れるようですね。

ちなみに、以下の記事では原油の価格予想をご紹介してます。ぜひ合わせてご覧下さい。

実はバフェットは、1999年にThe Berkhire Hathaway Energy(バークシャ・ハサウェイ・エナジー)という、エネルギー投資会社を立ち上げています。おもに、米国ローカルのベンチャー企業が対象で、太陽光・地熱・水素・バイオマスなどの再エネが主流です。
世界的なカーボンゼロへの動きに伴って、今後は再エネが急成長していくことが期待されています。とはいえ、完全にエネルギーが移行していくには、課題も多く年月がかかります。まだしばらくは原油なしで日常生活を送るのは困難なのが現状です。
バフェットのように、現状を把握しての強気の原油投資、そして将来を見据えての手堅い再エネ投資でバランスをとればリスクが低減できます。この機会にバフェットのポートフォリオをチェックして、いかにインフレ・リセッションに備えるべきか学んでみてもいいかもしれないですね。

