イラン核合意の再建に米国・イランは合意!?イラン核合意とはそもそも何なのか簡単解説

イランといえばイラン・イラク戦争などで国名は知っていても、日本人にとってはあまりなじみがない国です。いったいなぜ「イラン」はよく新聞やニュースに悪者っぽく出てくるのか、また最近頻繁に聞く「イラン核合意」とはいったい何なのか、疑問に思う方は多いのではないでしょうか。

2022年8月、米国とイランの核合意再建はいよいよ最終段階に突入したことが報告され、合意に向かう可能性が議論されています。

今回は、「イラン核合意」とはそもそも何なのか、また今後の展開や原油価格への影響などをカジュアルに解説していきます。イランや核兵器、米国、原油などに関心がある方はぜひ気軽に読んでみて下さい。

イラン核合意とはそもそも?

新聞やニュースなどでは、最近よく「イラン核合意」などという言葉が出てきます。何となく「イラン」は核兵器がらみで危険な国らしいとの認識はあっても、いったいどんな合意なのがあまり説明されてなかったりします。

「イラン核合意」とは、かつてイランと米国・フランス・ロシアなどの7か国が締結していた核燃料に関する取り決めで、2018年に米国が離脱している合意のことです。

2021年以降から再建に向かって、イランと米国は交渉を進めているのですね。最近、交渉も終局に近づいてきたということでメディアでも頻繁に取りざたされています。

前米大統領のドナルド・トランプ氏が、「イラン核合意」から離脱を表明したことは、まだ記憶に新しい方も結構いるでしょう。当時、米国が離脱を決めた「イラン核合意」とは、いったいどんな内容なのでしょうか。

出典:Moscow Welcoms ’Progress’ on Iran – Moscow Times

イラン核合意とは

イラン核合意とは、

イランが核兵器の保有やウラニウム・プルトニウムの保有を厳しく制限することを約束したものです。核兵器の保有を制限するかわりに、欧米はイランへの経済制裁を行わないことを保証する内容となっています。

世界平和を保つための安全保障のようなもので、2015年にイランと米国などの7か国によって締結されました。正式名称はJCPOA(Joint Comprehensive Plan Action/包括的共同行動計画)といいます。

イラン合意が結ばれた背景には、

  • 1985年(イラン・イラク戦争)あたりからイランは核兵器製造している疑い
  • イランの核兵器疑惑にあたって欧米は経済制裁を実施

といった状況がありました。

イラン核合意の内容は、

  • IAEA(国際原子力機関)はイランの核燃料の保有・製造過程を監視できる
  • イランは核燃料の保有・使用を大幅に削減する
  • 欧米はイランへの経済制裁を緩和・解除する

となります。以上の内容がイランと米国・欧州の署名のもとで約束されました。

イラン核合意を締結した国

イラン、米国、ロシア、中国、フランス、英国、ドイツ、(EU)

トランプ大統領がイラン核合意から離脱

イラン核合意が締結されたのは2015年のオバマ政権の時でした。

オバマ大統領
オバマ大統領

核開発を大幅に厳しく制限する代わりに、

イランへの経済制裁は解除する。

しかしその後、2018年にトランプ大統領はイラン核合意からの離脱を表明したのです。(トランプ大統領お馴染みの不意打ち的ないきなりの表明でした)

トランプ大統領
トランプ大統領

イラン合意が十分に機能しているとは思えない。

イランは危険だ!離脱だ!経済制裁を再開する!

離脱の理由は、「イランは合意に反して核兵器を製造している、合意はまったく意味がない」といったもの。

イラン核合意を離脱することで、トランプ大統領はイランへの経済制裁が実施できるため、イランが核兵器製造に使う資金を阻止できるとうったえていました。

当時のドイツ首相のアンジェラ・メルケル、フランス大統領のマクロン氏は・・・

メルケル首相
メルケル首相

トランプ氏がまた突拍子もないことを・・・。

米国が抜けると意味がない。食い止めなければ。

マクロン大統領
マクロン大統領

合意を離脱すれば、イランの核兵器製造は悪化する一方だ。

トランプ氏を説得しなければ。

米国の離脱に驚き慌てた欧州は、米国ぬきでは合意の意味がないと、説得して何とか食い止めようとしました。

しかし・・・

トランプ大統領
トランプ大統領

これまでにない最高レベルの経済制裁をイランに!

例のごとくトランプ大統領は我が道を行くの断固たる姿勢で、本人いわく「最高レベルの経済制裁」をイラン向けに着々と進めていったのでした。

サウジアラビア
サウジアラビア

ふーん。イランをこらしめるんだったら賛成だね。

イスラエル
イスラエル

いいぞトランプ。これでイランの威力も弱まる・・・

もともと敵対していたイスラエルとサウジアラビアは米国の離脱を歓迎。イランはといえば、「自衛のために核兵器を保有しているだけなのに」と真相は不明ですが激怒しました。

イラン
イラン

いいがかりも甚だしい。いくらなんでも身勝手すぎる・・・

それなら本当に思い切り核兵器をつくってやろうか。

あまりにも一方的で突然の離脱に、当時のイラン大統領ロウハニ師は「米国はまもなく史上かつてないほどに後悔するだろう」と警告しました。以来、米国とイランは今回の再建の協議が持ち上がるまでは緊迫した関係にあるのです。

再建に向けての最終文書とは

そして時代は変わり、バイデン大統領が新たに就任。バイデン大統領は、トランプ氏がことごとく離脱・解除・撤退した数々の条約や取り決めを復活させる方針でした。(前大統領とは全く逆の方針をとることが米大統領の近年の習わし?)

就任後、イラン核合意の再建を目指しイランとの交渉を重ねていましたが、2021年はほとんど進展を見せず難航していたようです。

出典:Iran Stops Pretending – The Atlantic

というのも、イランで新たに大統領として就任したライシ師は、穏健強硬派であるとともに反米国派です。検事時代には反体制派の処刑に加わったとして、ダイレクトに米国の経済制裁を受けています。

イランは、突然の米国の離脱と経済制裁によって大きなダメージを受けていることから、核合意の再建にあたっては、「まずは、米国が経済制裁を解除すべきだ。」と強く主張しています。

双方の交渉の論点をまとめると、

  • イランのテロ組織「革命防衛隊」の解除
  • IAEA(国際原子力機関)のイラン核施設の査察を継続
  • 米国は再び離脱しないことを確約

以上の3つが柱になっています。

2022年に入ってからは、ロシア・ウクライナ問題が持ち上がったため、いったんイランとの協議は中断されました。

しかし、加速するインフレとエネルギー高の解消に、イランがひと役かってくれるとバイデン大統領は再び本腰を入れてイランとの交渉に取り組む方針を表明しました。

なぜなら、イランはサウジ・カナダに次いで世界第4位の原油埋蔵量を有しているからです。もし合意が得られれば、大量の原油供給がイランから期待できるわけです。

世界の原油埋蔵量(国別)2022

出典:Oil Reserves by Country 2022

原油埋蔵量ランキング 世界シェア率

  1. 1位:ベネズエラ 17.5%
  2. 2位:サウジアラビア 17.2%
  3. 3位:カナダ 9.7%
  4. 4位:イラン 9.1%
  5. 5位:イラク 8.4%
バイデン大統領
バイデン大統領

核兵器反対!世界平和のためにイラン核合意を再建する!

(イランとの交渉が成立すれば、原油の供給量が増やせる!)

米国はここにきて改めて、イランが問題解決のキーポイントであることに気づきます。EUは仲介者として米国に大幅譲歩を提案。イランと米国の間に入って交渉にあたっています。

出典:イラン核合意再建、EUが大幅譲歩案

8月8日、EUは「交渉できるものはすべて交渉した」とイランあてに「最終文書」を提出しました。米国務省報道官は「EUの提案に基づき早期に合意する用意がある」と前向きな意向を述べています。

数週間程度でイラン側の返答がなされる予定です。

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イラン核合意の再建が原油価格に及ぼす影響

では、最後にイラン核合意が再建された場合に、原油価格にはどのような影響があるのか考えてみたいと思います。

合意が成立すれば原油価格は急落?

合意が成立した場合に最も注目されているのが、原油価格に大きな影響が出てくることです。米国の経済制裁が解除されれば、イランが国際原油市場に復帰する可能性が高くなります。十分なキャパシティをもつイランの参入によって大幅供給が実現、原油安に向かうことが予想されます。

イラン核合意再建の成立シナリオから投資家心理は悪化、すでに原油価格は下落傾向にあります。

出典:イラン核合意に進展 – Reuter

WIT原油は、IEAが原油需要の見通しを上方修正したのち、一旦は95ドル台への回復を見せていました。ところが、EUの「最終文書」の前向きな報道とともに安値90ドルまで下降しています。交渉の進展具合に応じて、さらに下降に向かう可能性は否定できないでしょう。

合意が不成立となる可能性もある

もちろん、イランが2018年に体験した、米国の裏切りへの不満や怒りは今だに根強く残っているのも事実です。そう簡単に米国や欧州が意図したように話が進むとは限りません。

イラン側の方では、現在米国や欧州がおかれているインフレ・エネルギー高の状況は十分に理解しています。そして、イランの原油を米国・欧州がこれまでになく渇望していることも察しています。

この状況から、イランはもっと難解な条件を求めてくるかもしれません。あるいは単純に、利用されるのが嫌で合意には進まないかもしれません。

また、もう1つ考慮しておきたいのが、イランとロシアの関係です。

プーチン大統領は、中東諸国へのアプローチを数年前から強化しており、イランもその国の1つです。イランとロシアは武器の取引や安全保障などにおいてきわめて親密な関係にあります。

出典:Growing Iran-Russia ties – DW

バイデン大統領が中東訪問をした後に、プーチン大統領もすぐにテヘランを訪問しています。その日の対談にて、軍事パートナーシップを協議、かつプーチンはイランから大量のドローンを購入しているのです。

イランが核合意再建の「最終文書」にどう回答してくるのか、成立・不成立とどちらの可能性も十分に考えられるため非常に微妙だといえるでしょう。

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まとめ

イラン核合意再建の仲介役を務める、EUボレル外相は「最終文書」に提示した交渉内容には変更の余地はない旨を明らかにしています。譲歩に関しては、妥協ラインとしてぎりぎり限界の内容となっていることが示唆されています。

一方、イランの方では協議したうえで「追加の見解や留意事項」を伝える方針を示しているとのこと。

イランと米国それぞれがどこまで相互に妥協するかが、合意成立のポイントだといわれています。

仮に、もしスムーズに米国が経済制裁を解除したとするなら、コモンウェルス銀行のアナリストの見解では、

「イランの輸出が6カ月以内に世界供給の最大1.5%に相当する日量100万~150万バレル増加する可能性がある」

Reuters

と見ています。

成立・不成立の可能性は今のところ5分5分だといえ、原油取引において、今後数週間は目が離せない展開となりそうです。

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