LNGのことは知っていても、LNGを運ぶためのLNGタンカーについてはあまり知らない方も多いかもしれません。
日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼っています。ガス輸入のほとんどがLNGタンカーで海外から日本まで輸送されています。LNGタンカーは私たちの生活に欠かせない重要な輸送機器なのです。
エネルギーが注目される中、LNGタンカーという言葉もたびたび見聞きするようになりました。
単に興味がある方や、エネルギー投資をしている方は、この機会にLNGタンカーとは何なのか、用途や種類・大きさなどについて見ておきませんか?

LNGタンカーってどんなものなの?何に使うの?

LNGタンカーとは、簡単にいうと液体にしたガスを運ぶ船のことです。
巨大なサイズの船で特殊な機能を備えているのが特徴。天然ガスが採掘できる産出国から、日本のように輸入している国にガスを輸送するために使われています。
LNGタンカーの役割や用途、輸送の仕組みなどを詳しく見ていきましょう。
LNGタンカーとは、LNGの輸送に使われるタンカーのことです。
LNGとは、Liquified Natural Gas(液化した天然ガス)のことで、大量のガスが輸送できるように気体で採掘されたガスを液状にしたものをいいます。
一般家庭や産業・工業で使われるガス、暖房の燃料、火力発電の燃料としてLNGは使われています。LNGは日常生活に欠かせないエネルギーなのです。
天然ガス(LNG)とはどんなエネルギー?天然ガス投資のメリット・デメリット
もともとガスはパイプラインを介して輸送されていましたが、海外へも大量にガスが輸送できるようLNGタンカーが開発・製造されるようになったのです。
ガスは-161.5℃以下で冷却すると、体積が約600分の1に凝縮します。温度を上げるとガスが膨張するため、LNGタンカーには極低温機能が備わっています。大量に貯蔵できる巨大なタンク・容積を持つのがLNGタンカーの特徴です。
液状にされたガス、LNGは専用のLNGポートからタンカーに積まれて輸出されます。

輸入国に届いたLNGは、まずLNGポートのタンクに液状のまま受け取ります。
そのタンクから各ガス会社(供給会社)に、LNG専用のタンクローリーで輸送され、一般家庭や工場などに供給されます。
厳密にいうと、LNGタンカーはプロパンガス用のLPGタンカーと2つの種類に分けられています。それぞれ届いたガスはプロパンガス会社と都市ガス会社へと輸送されていきます。

ガスが生産され、実際に供給されるまでを1社が総括して行うケースと、1つの1つの過程で複数の会社が受け持つケースとあります。
ガスが届くまでの流れ
「ガス開発・生産」→ 「生産国内における輸送」→「LNGポートの管理・運営(出荷)」→「タンカーによる輸送」→「LNGポートの管理・運営(入荷)」→「輸入国内における輸送」→「ガス製造・販売会社」→「ガス輸送/パイプラインの管理・運営」→「一般家庭または工場など」

普段、何気なく使っているガスですが、実に複雑な過程を経て届けられているのです。

タンカーには平たいタイプと丸いタンクがついてるのと
あるみたいだね。
LNGタンカーにはどんな種類があるの?

では次に、タンカーの種類を見てみましょうか。
LNGタンカーは大きく2つのタイプに分けることができます。
- モス型(Moss – Type) → 丸いタンクがのっているタイプ
- メンブレン型(Membrane – Type) → 平たいタイプ(タンク内蔵型)

モス型は、独立球形タンク方式とも呼ばれていて、船の表面に球体のタンクが数個乗せられているタイプのタンカーです。タンクの3分の1~3分の2が船体に埋め込まれています。

タンクと船体が完全に分離する構造となっているため、悪天候や事故などで船体が打撃を受けたとしても、タンクへの損傷を避けることができます。
モス型は、波動や気温の変化からガスを守る安全性が高い方式です。
メンブレン型は、船体とタンクが一体型のタンカーで、船体そのものがタンクとしての役割を果たしています。船の形をした巨大なタンクにガスを貯蔵するイメージですね。

船の内側(タンクの内側)は、網目状やヒダ状になっていて、ガスの温度を超低温に保ち膨張を吸収する構造です。船のスペース効率が高く、モス型よりもはるかに大量のガスが積載できる点で優れています。

船体の重量を抑えるため、エネルギー効率が高くなる点もメンブレン型のメリットとなっています。

LNGタンカーってどれくらい大きいの?

さて、驚くのがLNGタンカーの大きさです。
全長や幅、重量などをここで見ていきます。

LNGタンカーの全長
LNGタンカーの全長は平均すると250m~300mぐらいです。LNG以外のタンカーだと400mを超えるタンカーもあります。
LNGタンカーの幅
幅は50m~80メートルぐらいが平均的です。
LNGタンカーの重量
ガスを積載しない状態で、15トン~30トンぐらいです。70トンを超えるものもあります。
普段の生活の中で、LNGタンカーを目の当たりにする機会はなかなかないのが一般的です。どれぐらい大きい船なのか検討もつかないですよね。
例えば、全長330メートルだと、ちょうど東京タワーと同じ長さになります。サッカーフィールドを縦に3つ並べた長さと同じぐらいです。

LNGタンカーの積載量
LNGタンカーの積載量は15万㎡~20万㎡となります。供給する時には気体に戻すことで約600倍のガスを得ることができるのです。
LNGタンカーのエンジン
さらに、凄まじく巨大なのがタンカーのエンジンで、3m~5mのディーゼルエンジンを6気筒~8気筒組み合わせる構造となっています。全長20m以上になるものがほとんどです。

上記の画像は、カワサキの大型バイクとタンカーのエンジンを比較したものです。タンカーのエンジンはクレーンで備えられています。まるで高層ビルを建てるかのようなイメージで、タンカーは建造されています。

LNGタンカーの巨大さが何となく想像できましたね。

世界で一番大きいタンカーって
どれくらい大きいの?

では、最後に世界の巨大タンカー
トップ3をご紹介しておきたいと思います。
世界で一番大きいLNGタンカーは、カタールの「Qmax」というタンカー。
「Qmax」はカタールの大手ガス会社Qatar Gasが開発・建造したものです。積載量は世界一で26,3000~266,000㎥のガスを積むことができます。
長さ354m、幅55m、高さ12mの巨体です。東京タワーよりも大きいサイズになり、メジャーポート向けのLNGタンカーです。
日本で一番大きいタンカーは、川崎汽船(川崎重工)の「LNG SAKURA」が全長300m。

積載量では「PACIFFIC BREEZE」が最大級の182,000㎥となります。
タンカーは巨大になるほど、積載量も大きくなるメリットがあるのですが、運河を通れなかったり港に入れなかったりするデメリットもあるとのことです。渡航先にもよっては、大きめの中型クラスが融通がきくため需要が高いようです。
世界で2番目に大きいLNGタンカーは、これまたカタールの「QFlex」です。全長315m、幅50m、高さ11m、最大で217,000 m3のLNGが積載できます。
「QFlex」はHyundai Heavy Industries(現代重工業)が2007年に建造したものです。
なぜカタールで世界最大級のLNGタンカーが建造されているかというと、カタールは天然ガスの産出量では世界トップ5、埋蔵量ではベスト3にランクインする国だからです。
ウクライナ以降、欧州と新たにガス供給の契約を締結しています。

そして、巨大LNGタンカーの世界3位はインドのタンカー「Gail Bhuwan」です。インドは、天然ガス輸出国ではなく、米国やロシアから天然ガスを輸入するために建造されたタンカーになります。
インドは中国の次に人口が多い国です。12億人以上の莫大な人口にともない、莫大なエネルギー需要があります。巨大タンカーがインドの莫大なエネルギー需要に応えているのです。

他にも、ロシア、英国、韓国などの巨大タンカーがベスト10にランクインしています。
天然ガス(LNG)とはどんなエネルギー?天然ガス投資のメリット・デメリット
世界最初のLNGタンカーは、英米共同で試行された「メタン・パイオニア号」です。ここからLNGタンカーの輸送が開始されます。
日本で初めてLNGタンカーにての天然ガスの輸入を開始したのは「東京ガス」です。1969年、アラスカから横浜に東京ガスのLNGタンカー「ポーラ・アラスカ号」が到着しました。これが最初の国内のLNG輸入となります。
LNGだけに限らず、タンカーは日常とはあまりにもかけ離れた巨大な建造物です。その独特の世界に、魅力を感じる人も少ないでしょう。日本は中国と並んで、アジア圏の海運事業ではトップにランクインする国です。造船では長い歴史と実績を有しています。
ぜひ、この機会にタンカーの世界をちょっと覗いてみるのも面白いかもしれないですね。

