原油下落の要因とは?WTI原油80ドル割れ!今が買いかそれとも待つべきか

11月21日、WTI原油は2か月ぶりに80ドルを割り、26日のNY時間は76.28ドルでクローズ。さらに月曜日は安値を更新しました。中国のロックダウンによる需要低迷、ロシア産原油へのプライスキャップ、利上げなどいくつかの要因が原油売りを促したようです。

ウクライナ侵攻以来、原油が80ドルを割ったのは今回で2回目。76ドル台にきた原油を見るにつけて、今が買いかそれも待つべきか検討する投資家は多いでしょう。

そこで、原油を取り巻く現在の状況はどうなっているのか、今後の展開を探るためにまとめてみました。

WTI原油80ドル割れ!原油下落の要因とは

NY原油先物、WTIは11月21日に9月以来約2か月ぶりに、心理的節目となる80ドルを下回りました。75.25ドルの安値をつけた後、いったんは80ドルまで回復したものの、再び25日金曜日に76.22ドル、とうとう月曜日には73ドル台まで落ち込んでいます。

前回、80ドルを割り込んだのは2022年1月のこと。

今回の下落要因は大きく3つ上げることができます。

  • 利上げによるリセッション
  • 中国のロックダウン
  • ロシア産原油のプライスキャップ

11月28日時点のそれぞれの状況を調べてみました。

利上げによるリセッション

まず原油を押し下げている要因は、40年ぶりのインフレから派生する連続利上げです。相次ぐ利上げからリセッションの到来が予想されていて、原油需要が著しく低下するとの思惑から原油売りを促しています。

出典:FRB 連続利上げ – 朝日デジタル

周知のごとく、主要国で利上げを実施していないのは日本ぐらいで(世界の七不思議の1つになろうとしている?)、米国をはじめ英国、EU、豪州、カナダとかつてないペースで利上げが行われているのです。

相次ぐ利上げによって、景気低迷が懸念され主要株式インデックスは2022年は下落傾向にあります。

9月から10月にかけての落ち込みがとくに激しく、2021年11月と比較すると日経平均は-10%、ダウ平均は-16%、S&Pは-20%も下がっています。

今月末は、2023年に向けての利上げ緩和が期待されていて、やや回復中です。しかし、世界銀行の予測では22年度のGDP成長率はおおむね約50%以下に低下、23年にはリセッションの到来を予測しています。

出典:利上げドミノ‐ エコノミスト

欧州、英国はすでにリセッション入りをしているとも言われていて、世界的な景気低迷への不安から原油が売られている状況なのです。

中国のゼロコロナポリシー

おそらく、今回の原油下落で最大の要因となっているのが中国のゼロコロナポリシーです。

コロナウイルスが世界を網羅してから2年以上が経過。ほとんどの国が感染者を抱えつつも、ワクチンを活用しながら「with コロナ」へと規制を緩和してきています。

中国は依然として、コロナウイルスの感染者をゼロにすることに固執しており、現在でも厳しい入国制限や行動規制が実施され、時にはロックダウンを実施することもあります。

中国の実質GDP、製造業PMI

出典:中国景気概況 – 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

ゼロコロナポリシーにて、市民生活や企業活動は制限されてしまい、2022年の中国の経済成長は大きく減速しているのです。

ゼロコロナポリシーの影響から、世界トップにランクインする中国の原油輸入が減少・停滞するとの見方が強まっているのです。

2021年 原油輸入世界ランキング

出典:Crude Oil Importer World wide – statista

上図グラフは、2021年度の原油輸入世界ランキングです。原油輸入が多いのは1位が欧州全域、国別でみると中国は1位なのです。

  • 中国の経済成長 → 原油輸入が増える → 原油高
  • 中国の経済低迷 → 原油輸入が減少 → 原油安

中国の原油需要と原油価格は非常に密接に関係していて、中国の経済情勢から価格が左右される傾向にあります。

さらに、中国の経済低迷への懸念に追い打ちをかけたのが11月27日~28日に勃発した「ゼロコロナ 抗議デモ」です。長引く規制に耐えかねた市民が中国各地で、デモを実施しました。

このニュースを受けて、中国経済にしばらく混乱が生じる可能性から、原油価格は73ドル台へと安値を更新しています。

ロシア産原油のプライスキャップ

そして、原油下落をもう1つ後押しする要因となっているのが「ロシア産原油のプライスキャップ」です。

プライスキャップとは

公共料金などに対して行政が「価格上限」の規制を行うことをいいます。物価上昇率をもとに設定され、これ以上の物価上昇や価格高騰を抑えることを目的としています。

「価格上限設定」とも呼ばれている規制のことです。

「ロシア産原油のプライスキャップ」は、制裁措置の一環として、6月のG7サミットにてが考案されました。原油価格の高騰を抑えるだけでなく、ロシアの原油収入を減少させる狙いがあります。(EUでは天然ガスのプライスキャップも協議中)

12月5日より、EUはロシア産原油の禁輸を開始、それに合わせてG7国(主要7か国)は一斉に「ロシア産原油のプライスキャップ」に踏み切る方針です。

出典:G7のロシア石油「価格上限」- 日経新聞

日経新聞によると、原油の価格上限は「1バレル65~70ドル」と報告されています。

参照:G7のロシア石油「価格上限」- 日経新聞

参照:ロシア産石油上限価格 – 日経新聞

すでに輸入禁止を実行している米国は12月5日午前0時より発効、日本はサハリン2から調達する原油以外を対象に5日から実施する予定です。

欧州は輸入禁止の実施は決定済みですが、プライスキャップはまだ合意に至っていません。

プライスキャップへの懸念が、中国の需要低下・リセッションの需要低下と相まって、価格を押し下げる要因となっているのです。

天然ガス価格の上限設定 EUはプライスキャップを実行に移す!?

原油価格はまだ下がるのか?

さて、気になるのが今後の原油価格の行方です。

  • 11月18日 安値 76.25ドル
  • 11月21日 安値 75.27ドル
  • 11月28日 安値 73 .62ドル

28日、日本時間23時50分現在は73ドル台の安値をつけたのち、75ドル台まで回復したところです。

80ドルを割ったことで、原油市場はある意味ショックを受けており、投資家心理も悪化しやすい状況にあります。ネガティブな要素に過剰に反応する恐れがあるということです。

これまでになく、慎重なエントリー・判断が必要となる局面にきています。

では、今後の展開として70ドル割れのシナリオと、80ドル以上に回復するシナリオと双方を検証しておきたいと思います。

70ドル割れの可能性は?

原油価格が70ドルを割るシナリオとは・・・

インフレがピークにきていない

11月に入ってから、市場ではインフレがピークを越えたのではないか、との見方が出始めています。しかし、もしインフレがピークをまだ迎えていないとするなら、主要国の利上げも同ペースで進む可能性が出てきます。

利上げペースが収まらない場合は、いよいよ本格的なリセッションです。需要低下が危惧され、原油価格の70ドル割れもあり得るかもしれません。

シティグループは、もしリセッションに突入するなら22年年末までに原油は65ドル、23年は45ドルまで下がる可能性を示しています。

参照:原油は年末までに65ドル – Bloomberg

中国の需要低下は原油には致命的

そして世界的なリセッションも確かに下落要因となり得ますが、用心したいのが中国の原油需要が低下することです。

中国のゼロコロナポリシーが全く緩和されない、となれば中国経済に影が差す恐れがあり原油下落の可能性が出てきます。とくに抗議デモが収まらずに、中国政府と市民の対立が拡大すれば、市場に混乱を与え70ドル割れの可能性が強まるでしょう。

原油価格が急落!価格が下がる理由 原油投資のメリットと今後のリスク

76~80ドルあたりで「買い」か?

では、「買い」を決めるシナリオはどのようなパターンなのか見ていきます。

FRB利上げベースの緩和が原油上昇につながる

もしインフレがピークをついているとすれば23年度には、FRBが利上げペースを落とす可能性が指摘されています。来年度末には利下げを予測する声も出てきており、利上げ懸念に関しては、まずは2023年明け1月最初のFOMCが注目されるところです。

0.75ポイントベースが緩和されれば、原油への影響も大きく低減されるといえるでしょう。

OPECプラスは需要低下をすでに織り込んでいる

OPECプラスは、すでに利上げによるリセッションを織り込み済みです。10月には200万バレルの大幅減産に入り、11月の米国原油在庫は前月比で減少しています。

単純に需給バランスから判断すれば、価格は回復に向かうと見れます。利上げ、中国ロックダウンの懸念が和らぐとするなら、74ドルの安値から上昇を始めたあたりが「買い」のチャンスといえるかもしれません。

OPECプラス 200万バレルの大幅減産!原油価格は再び100ドルを超える可能性

プライスキャップはむしろ上昇要因となり得る

G7主要国政府とは全く別の見解が原油市場では持ち上がっています。

プライスキャップが原油価格を下げる要因になっている一方では、むしろロシア産原油の減産が上昇要因となり得ると懐疑的な声も少なくありません。

いずれにしても、現在の原油価格がすでに70ドル台で推移していることから、プライスキャップの影響は限定されていると市場は見ています。

ちなみにJPモルガンは、プライスキャップが実施されると原油価格は380ドルまで上昇する可能性があるとの見解です。

原油価格は380ドルまで上昇する可能性!?JPモルガンの原油価格の見通し

まとめ

不安要素がいくつか持ち上がると、必要以上に価格が下がりすぎてしまうことがあります。原油の需給バランスは上昇要因のほうが大きいにもかかわらず、やはり、衝撃的な暴落を何度も経験しているWTI原油に限っては、投資家も売りに走りやすいのだといえます。

ここ数か月の何とも激しいボラティリティを思えば、状況しだいで原油価格が90ドル台に回復する可能性はもちろんあります。しかしながら、80ドル割れ75ドル割れを見せてしまった以上、今回の下落をきっかけに暴落へと向かうリスクは否めません。しばらくは様子見へと転換するのが望ましいでしょう。

ただ覚えておきたいのが、ロシアが大幅減産を実施するなら、原油の需給バランスはこれまでになくタイトな状況となる点です。需要低迷にある中でも、大幅減産が実施されれば上昇に向かうこともあり得ます。中国、FRB、ロシア関連の情報にアンテナをはって、出方を見極めたいところですね。

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