バイデン大統領 初の中東訪問。サウジアラビア皇太子との会談で原油は増産か?

バイデン米大統領は、7月13日~16日にかけて就任してから初の中東訪問にのぞみました。

今回の中東訪問は、米国の中東との友好関係を修復・強固にすることが目的とされ、とくにサウジアラビアへの原油増産を要請することおもな理由だといわれています。

果たして、15日のサウジ訪問では具体的に何が協議されたのでしょうか?そして、気になる原油増産・原油価格の行方はどうなるのでしょうか。

今回はバイデン大統領の中東訪問とサウジアラビア皇太子の会談について、簡潔にわかりやすくまとめてみました。

バイデン大統領の初の中東訪問

今回のバイデン大統領の中東訪問は13日~16日の3日間。13日~14日にかけてイスラエルパレスチナ訪問、15日はサウジアラビアに向かい、その後リヤドで開催される湾岸協力会議(GCC+3)に出席しました。

出典:米国とサウジアラビア – 日経新聞

イスラエルに到着したバイデン大統領は、中東で脅威をなっているイラン核保有への制裁について協議。

そして、いよいよ15日、今回の中東訪問のメイントピックとなるサウジアラビアに到着、サウジ皇太子(実質の権力者ムハンマド・ビン・サルマン)と会談を行いました。

サウジアラビア皇太子との会談

今回の中東訪問にてもっとも注目されているのが、7月15日のサウジアラビア皇太子との会談です。

出典:バイデン氏 サウジ皇太子と対談 – 日経新聞

名目上のサウジ訪問の目的とは

今回のサウジアラビアへの訪問は、米国のガソリン価格高騰を解決するために、原油の増産要請を行うことにあるのは一目瞭然であり周知の事実です。

サウジアラビアは、世界トップの原油生産国。ロシア・ウクライナ問題から、禁ロシア産原油からの供給不足の穴埋めができるのはサウジアラビアだけだといわれています。

米国ではガソリン代がとうとう5ドル台に突入、ここ数週間は原油価格は90ドル台で推移しているものの、まだこれから上昇する可能性が否定できない状況にあります。

欧米をはじめ、エネルギー高によるインフレに多くの国が苦戦している間、サウジアラビアは2021年後半から1日に10億ドル(1,000億円)ペースで原油輸出の収入を得ています。

出典:The kingdom’s making around $1 billion – Bloomberg

インフレの代名詞となりつつあるバイデン大統領は、ここにきてサウジアラビア以外に、悪化するインフレを解決する方法はないと認識したに違いありません。

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表向きの訪問理由は中東の安全保障と関係修復2018年のサウジ記者殺人事件の追求・解明だとされていますが、本来の目的はもちろん原油の増産要請です。

出典:米国とサウジアラビア – 日経新聞

中東の安全保障

中東の安全保障とは、おもに中東で脅威となっているイランへの制裁、そしてイスラエルとパレスチナ紛争の解決を意味しています。

イランは必要以上に核物質を保有、核兵器化や核弾道への技術も有しているとみなされており、中東だけでなく世界的な脅威となっています。それに対して、米国は経済制裁を与え続けているのです。

出典:Scenarios for Unraveling Iran Nuclear Deal – Energy Intelligence

イスラエルとパレスチナは、民族的対立によって首都をめぐり70年以上も紛争を続けています。米国は定期的に和平交渉に介入しているものの解決が難しいといわれています。

2018年の記者殺人事件

2018年のサウジ記者殺人事件とは、トルコで起きたサウジジャーナリスト「ジャマル・カショギ氏」の殺人事件のことです。

カショギ氏はサウジ政府に批判的なジャーナリストで、王室からの迫害リスクを避けるため米国に移住し、記事執筆を継続していました。

しかし、2018年にサウジ領事館に立ち寄ったまま行方不明となり、後日トルコで殺害されていたことが明らかになったのです。この殺人事件に対して、米国はサウジ皇太子が関与していると指摘。バイデン大統領は「皇太子に責任がある」と非難していたのです。

エネルギーLAB
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あくまでも、中東訪問の目的は安全保障に加えて、サウジ記者殺人事件・人権問題を追及するためだと公的には表明されていました。

サウジアラビアでは実際に何を協議したのか?

サウジ会談後に、メディアのインタビューにてバイデン大統領は、数週間以内に原油増産が実施されることを期待していると述べています。

サウジ記者殺人事件に関しては、サウジ皇太子への非難する気持ちに変わりはないと会見でも強調。それに対して皇太子は殺人事件とのかかわりを否定しています。

「世界の経済成長を支えるためのエネルギー安全保障や適切な原油供給について良い議論をした」

「私は米国への原油供給を増やすために全てのことをする。サウジとはその緊急性を共有した」

「我々の議論を踏まえて数週間で追加措置があると期待する」

引用元:バイデン氏、サウジ皇太子と会談 – 日経新聞
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バイデン大統領の中東訪問と原油価格

では、次に今回のバイデン大統領の中東訪問が、原油価格に与える影響を検証していきます。

まず、考慮したいのが今回の中東訪問に関しては、反対の意見が多かったことです。中東訪問を公表したときには、なぜ、今頃になって突然中東の安全保障・人権問題を持ち上げるのか?これが多くの人達にとって疑問となっていました。

バイデン大統領の真の目的とは

実は、今回の中東訪問の真の目的は中間選挙での支持率を得るためだといわれています。

5月終盤~6月にかけてバイデン大統領への支持率は36%まで低下。このままでは、11月の議会中間選挙にて過半数を割る可能性があるわけです。

中間選挙での支持率がかかっているから、緊急でエネルギー高を解決する必要があったのだと見られています。

今回の中東訪問に批判的な意見も少なくない

バイデン大統領は、もともと就任前からサウジ記者殺人事件において、サウジ皇太子を非難し続けていました。人権尊重の面で、サウジ皇太子を非難していたことが支持を集める理由となった部分もあったのでした。

しかし、今回の原油増産の要請と中東との関係改善は、いわば言い換えると「かつての非難を撤回する・支持者を裏切る」行為だとみられています。加えて、中間選挙を見越したあくもまでも自分本位の行為だなどと批判的な見方が結構多いのです。

バイデン大統領とサウジ皇太子の会談のグータッチは握手よりも最悪。むしろ恥ずべきことだ。

引用元:ワシントンポストの記事引用 by CNBC
エネルギーLAB
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米国に足並みをそろえがちな日本ですら、批判的な意見が少なくないのは注視すべきかもしれません。

出典:バイデン氏、ムハンマド皇太子とグータッチ – 朝日新聞

批判を呼んだのは、ちょっとくだけた言い方をすれば、「バイデン大統領の魂胆がみえみえすぎていて」であまりにもその場しのぎ・ご都合主義の訪問だからです。

相次ぐウクライナへの過度な支援金と武器提供、原油価格の高騰はバイデン大統領自らが招いた失策だといえます。本来なら、終戦・和解へと仲介すべき米国のリーダーシップに疑問が持たれ始めているのです。

原油価格はどうなる?

さて、最終的に原油価格はどうなるでしょうか。市場での見解を取り入れながら、サウジアラビアの考えを探ってみたいと思います。

出典:Do not expect miracle – Nikkei Asia

シンガポール大手エネルギー調査会社「バンダ・インサイト」のバンダナ・ハリ氏によると、今回の中東訪問にて原油価格に奇跡が起きるとは思えない、と否定的な見解を述べています。

かつて、トランプ大統領が電話1本にてサウジの原油調整に影響を与えたのは、普段の親密な関係があったからとのこと。

サウジの存在をあからさまに否定し続けていたバイデン大統領が同じように影響を与えるとは到底考えられないことなのです。

出典:米サウジ 関係改善は望み薄 – 日経新聞

また、サウジはロシアとの関係ロシアが収益を得られるようにあえて増産を見送っているとの見方もあります。サウジアラビアとしては、疎遠な関係にある米国よりも、OPECプラスのつながりもあり普段から親密にしているロシアとの関係を優先したいとの考えがあるようです。

サウジアラビアにとってのバイデン大統領とは

選挙の時には「サウジアラビアを国際社会から除外する」とまで、サウジとの疎遠化を計る考えが過熱してました。それに加えて、やはり再エネ促進の行き過ぎた原油否定がさらに両者の関係を冷え込ませていたのです。

サウジアラビアとしては、世界のエネルギーで重要な役割をしている自国への訪問に、なぜバイデン大統領はここまで待ったのか疑問に思うとの意見もあります。いざ、ウクライナ問題で原油が高騰してしまった後の緊急要請の訪問だとしか受け取れないとのこと。

Biden arrives in Saudi Arabia a ‘much diminished president,’ the kingdom’s former intel chief says

かなり存在感を失くした大統領がサウジアラビアに到着した ~元サウジ機密機関長官

引用:biden-arrives-in-saudi-arabia – CNBC
エネルギーLAB
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ここまで評判が悪いのかと、驚くぐらいの悪評です。

原油増産の可能性はほとんど期待できない

サウジアラビアはOPECプラスの規範に多少はずれてまで、米国を助ける理由が見いだせないだろうという見解が十分に的を得ています。つまり、禁ロシア産原油の方針が続く以上、今後も原油価格は供給不足によって価格が値上がりしていく可能性は十分にあるということです。

ちなみに、世界の原油・ガス埋蔵量の65%は中東・ロシアの国営石油会社が占めています。

出典:NOCs OWN 65% of remaining discovered oil and gas – OFFSHORE ENERGY

Qatar Energy(カタール)、Saudi Aramco(サウジアラビア)、PDVSAA(ベネズエラ)、NIOC(イラン)、Gazprom(ロシア)、ADNOC(アブダビ)、Ronsneft(ロシア)

というように、いずれの国も欧米vsロシアとなった場合、反米国の傾向があり、ロシア寄りの立場をとっている国ばかりです。

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バイデン大統領が今後、反ロシア的方針を変えずに状況を改善していくのは厳しいといえます。原油・エネルギー関連における認識が足りなかったとしか、今となってはいえないでしょう。

※NOCs(National Oil Company/国営石油会社)

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価格高騰に続いて急落、ロシアにウクライナ、今回のバイデン大統領の中東訪問と何かと話題につきない原油です。ボラティリティの高さから原油に注目する投資家は増えているようです。

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まとめ

バイデン大統領の初の中東訪問は、サウジの原油増産がメイントピックとはなっていましたが、その影響力はあまりにも小さく期待できないとの見方が圧倒的です。今回の訪問が、サウジアラビア・OPECプラスの大幅増産のきっかけになる見込みはかなり低いといえます。

むしろ、突然に意向・政策をひるがえしたことご都合主義を批判する意見の方が多く、米国のリーダーシップ自体に今疑問が持ち上がりつつあります。インフレとともにウクライナの戦火をも悪化させたバイデン大統領は、いったい今後どうやって状況を改善させていくのか、世界が注目するところです。

おそらく、よほど新しい政策・方針を導きださないかぎり、原油・エネルギーは今後も上昇に向かう可能性の方が高いと見れるでしょう。

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