ここ最近、原油価格は急落と下落を続けています。高騰を期待して原油投資を始めたのに、いったい今後の原油はどうなるのか心配する投資家も多いのではないでしょうか。
いったん損切してしまったケースも少なくないでしょう。
相変わらず、原油の増産はかなり遅々としています。加えて、現在でも米国や欧州の禁ロシアによるガソリン高騰、エネルギー不足は深刻です。市場ではむしろ、価格は上がるはずだとの見解も多いのですが、一部では原油は65ドルあたりまで下がるとの見方もあるようです。
今回は原油価格が下がる理由とはいったい何なのか、そして、この機会に原油投資のメリット・デメリットを改めて確認していきます。
2022年、110ドル~120ドルで推移してWTI原油価格。3月には130ドルに触れた場面もありました。
目をみはるほどの原油価格の高騰に乗じて、原油関連の投資を始めた投資家は多いでしょう。バフェットが原油関連を次々と買い増し、市場でもまだまだ高騰するとの見方が優勢でした。
WTI原油価格

しかし、7月に入ってからというもの、原油価格は供給不足であるにもかかわらず急落。
とうとう100ドルを割ってしまいました。7月14日時点では、91ドル~93ドルあたりで推移。ここにきて、今後どうなるのか非常に危うい状況にあります。
シティ・グループ(Citi Group) によると、
もし、リセッションが市場を直撃したとすれば、原油相場は今年末に「1バレル = 65ドル」に下落。2023年度末には45ドルまで下がる可能性がある。
原油は年末までに65ドル~ Bloomberg
との見方を示しています。
このシティ・グループの予想が、ぐらつき始めた原油市場にさらなる動揺を与えたようです。「まだ原油価格は上がる」と見ていた多くの投資家に疑問を投げかける結果となっています。


ただし、シティー・グループの65ドル説は、
- OPECプラスが原油価格に介入しないこと
- 原油投資が減少すること
以上2つの要素が前提となっています。シティー・グループの原油下落のシナリオは若干無理があるとはいえ、JPモルガンなどの上昇説とは全く反対の説として、逆に注目されているようなのです。

原油価格は、本来なら「供給と需要のバランス」に大きく左右されるのが特徴です。
「供給、需要」という観点からみれば、明らかに価格は上昇に向かうのが当然だといえるのですが、なぜ、原油価格は急落し、今だに100ドル以下をさまよっているのでしょうか?

原油価格は絶対に上がると思ったんだけど・・・。どうして下がってるの?これからもっと下がるのかな?

本当にどうなることか、先が読めないですよね。まずは、原油価格が急落した理由をいくつか見ていきましょうか。
まず、一番に考えられる原油急落の原因は、「インフレ→リセッション」による原油の需要低下が懸念されていることです。
原油価格の高騰によって、これまではインフレ・リセッションの懸念がある中、ヘッジ効果として原油投資が注目されていました。しかし、ここにきて「利上げ + コスト削減」への不安が、原油上昇への期待よりも大きくなってきているのです。
米国6月のCPI

6月の米国CPI(消費者物価指数)は、9.1%を記録。大幅利上げが現実になるとの見方が優勢になっています。大幅利上げへが現実化するにつれ、原油上昇を不安に思う投資家が増えてきているといえます。
原油上昇が、ポジティブ要因ではなくネガティブ要因へと変化。投資家心理が悪化してしまっているわけです。
ただ、市場では原油独特のボラティリティの高さから、単に価格変動が激しくなっている、との見方も依然として存在します。

原油上昇への期待が失われているわけではないので、判断は非常に微妙で難しい状況にあります。
そして、もう1つ考えられる原油急落の要因は、バイデン大統領が「米石油大手への増産要請」を行ったことです。

6月14日、バイデン大統領は米国石油大手7社にガソリン価格の高騰を改善するために、増産要請を書面にて行っています。
米国石油大手7社
- エクソン・モービル(Exxon Mobil)
- マラソンオイル(Marathon Oil)
- バレロ・エナジー(Valero Energy)
- フィリップス66(Phillips 66)
- シェブロン(Chevron)
- BP(ADR BP)
- シェル(ADR Shell)
ちなみに、米国株は楽天証券にて取引きできます。
いずれの業者も、米国シェールガス生産において高いシェア率を誇る世界大手です。これら大手石油会社が大幅増産を実施することで、原油が供給過剰になるかもしれないとの見解があったわけです。

しかし、実状はといえばシェブロンやエクソン・モービルなどは、それに対して反論・抗議しているのですね。
一時は再エネ移行に向けて減産要請が行われていたため、政策に一貫性がなく経営上で困惑しているとのこと。安易に増産するのはリスクが高すぎる、国の政策として原油の需要を認識すべきだとの意見なのです。

従って、米石油大手の増産は思うように進んでいないのです。シェールオイルの供給量が著しく増加する可能性は今のところは低そうです。
また、ロシア産原油へのオイルキャップの可能性が原油投資家の心理を悪化させたのかもしれません。
オイルキャップとは、原油価格に上限を設けることです。
6月末のG7のミーティングにて、ロシアへの経済制裁としてロシア産原油価格を半額ぐらいに上限を設定する方針だと発表されました。この報道も、原油急落の大きな要因となりました。


しかし、G7の思惑とは反対に、原油アナリストを筆頭に市場では全く逆効果だという見方が優勢です。
なぜなら、ロシアがG7への報復として大幅減産を実行する可能性があるからです。世界1,2位を争う原油キャパシティを持つロシアが減産をあえて実行するなら、原油価格は380ドルまで上昇するとJPモルガンは警告しています。

「ロシアへの経済制裁 = 原油高」の数式はまだ健在なのです。

7月12日、原油増産調整を行うため、バイデン大統領は初めて中東を訪問しました。メインの目的はサウジアラビアへの増産要請です。
このことが1つは原油価格のネガティブ要素につながっているようです。バイデン大統領としては、サウジアラビアと米国は80年来の協定において相互に協力し合う関係にあると自負しているのです。
つまり、サウジアラビアは米国の要請に応えることになり、大幅な増産が実施されるかもしれないということです。
今回の訪問にて、バイデン大統領はサウジに圧力をかけるつもりだといわれています。
時は第2次世界大戦のさなか1945年のこと。当時の米国大統領ルーズベルトとサウジ政府は、安全保障と原油取引においてパートナーシップ同盟を締結しました。
- 米国はサウジアラビアを周囲国の脅威から守る
- サウジアラビアは一定量の原油を米国に供給

その後、数十年にわたって両国の同盟関係は円滑に保たれていたものの、近年になって状況は大きく変わってきています。
サウジアラビアは安全保障面で、米国よりもロシアに傾倒、同時に以前ほど他国に依存する必要がないほどの強国に成長しています。一方、米国はといえば、シェールオイルの開発に成功して以来、サウジに依存する必要がなくなってきています。
今となっては、80年前に締結された同盟はあまり意味をなさない、時代錯誤的な内容となっているのです。
数年前からサウジと米国の関係は当時とは大きく変わっています。
しかも、バイデン大統領は就任以来、今回のサウジ訪問が初めて!です。今まで、直接あいさつにも来なかったバイデン大統領の増産要請を、今回のいきなりの訪問でサウジアラビアが言われるままに従うわけがありません。
もともとバイデン大統領は「再エネ促進」に熱くなるあまり、サウジの存在を軽視しすぎていたようです。
結論をいえば、どう考えても、バイデン大統領の訪問が増産のきっかけになると考えるのは正直いって無理があります。少し乱暴な言い方をすれば、バイデン大統領は原油業界からかなり不信感をもたれているとっても過言ではないのです。

ただ、米国が世界トップの強国であることに変わりはないので、あからさまに否定するような態度は見せないでしょう。それが、原油投資家の心理を悪化させる要素にはなるかもしれません。


やっぱり、原油投資はリスクが高いのかな。その他の投資に比べてどうなの?

原油に限らず、投資は「リスク&リターン」の世界です。どんな商品でも、価格が下がり損失を出すリスクはありますが、とくに原油はボラティリティが激しいためハイリスクの投資となります。
この機会に改めて、原油投資のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
まず、原油投資の一番のメリットは、
原油なしで日常生活を送ることが不可能
なことです。
原油のおもな需要は自動車・輸送機の燃料。EVやハイブリッド車が普及し始めているとはいえ、まだまだガソリンやディーゼルが主流です。自動車だけでなく、航空機や船舶などほとんどの輸送機に原油を使います。

今のところは、つねに一定以上の需要が見込めることが原油の強みで、需要と供給のバランスによっては短期間でも価格が高騰しやすいのだといえます。

原油なしで世界は回らないため、原油価格に市場は非常に敏感です。3月に原油価格が高騰したときは、わずか1週間で40ドルも値上がりしています。
ボラティリティが激しく、短期間でも大きく稼げることが魅力となっています。

今回のロシア・ウクライナ問題のように、原油投資においては何かと重大なニュースが多いことでも人気があるのです。
原油のボラティリティの高さは、メリットであると同時に最大のリスクとなり得ます。
原油は「ハイリスク・ハイリターン」を代表する投資商品で、とくにロシア・ウクライナ以来、ボラティリティは極めて高くなっています。
原油WTI先物 1分足チャート

上図チャートはWTI先物の1分足チャートです。45分で5ドル近くも下降しているのです。
短い時間でも、あっという間に資金が底をついてしまうことも。十分に注意して取り組む必要があります。
原油投資を行う際に、けっして忘れてはならないことが、
「かつて原油価格はマイナスになったことがある」ということです。

どんな金融商品でも暴落のリスクはつきものです。しかし、マイナス価格をつけるほどのパニック売りは前代未聞です。2020年4月の原油暴落にて、破産した投資家も少なくないのです。

原油投資では、万が一の損切りは必須です。多少の損失は覚悟しておきましょう。
では、最後に今後の原油価格の見通しを検証してみます。
長期的な視野で考慮しておきたいのが、いずれは原油は再エネへとシフトされていくことです。それが何年後なのかはわかりませんが、世界は2040年~2050年のカーボンゼロに向けて着々とエネルギーの切り替えを行っているのです。
原油の需要がゼロになることはあり得ないでしょうが、長期ではほぼ確実に原油価格は大幅に低下することが予想されています。
いつまでも原油投資で稼げるわけではないということです。
しかしながら、短期的な視野でみれば原油価格の高騰を予測する見方もけっして少なくはありません。
あの、伝説の投資家バフェットは2022年の3月からずっと継続して原油株の買い増しを行っています。バフェットが選んだ原油株は、オキシデンタル・ペトロリウム(OXY)とシェブロン(CVX)です。
とくに、オキシデンタル・ペトロリウムの買い増しが加速しており、7月14日時点で24.12%のオキシデンタル株を保有したことになります。総額で$13.1 billion(約1兆5,000億円)になるとのこと。

シェブロンの方は、3月~5月に大量の買い増しを行っていて、また最近になって買い足しています。総額で$26 billion(約3兆円)のシェブロン株を保有しています。
2022年のバークシャ・ハサウェイの投資額は約6兆円を記録する中、そのうちの70%をエネルギー株に費やしています。買い増しのペースがあまりにも早いため、なぜバフェットがそこまで原油株にこだわるのか注目されてるのです。
長期投資家であるバフェットが原油株に走ることから、今後のさらなる原油上昇が期待されています。
バフェットのポートフォリオはこちらから
原油価格の上昇を予想している、もう1つの大手系はJPモルガンです。JPモルガンは、もしオイルキャップが実行されてロシアが報復の減産に進むなど、最悪のシナリオでは380ドルの高騰を予想しています。

原油への供給がひっ迫されていることから、原油は驚異的なリターンが期待できそう。目先の原油価格は150ドルあたりを期待しているのとのことです。

というように、原油価格は下落するとの見方もあれば、逆の展開を予想する見方もまだまだ有力なのです。
どう見るかは、それぞれの判断によるといえますが、バフェットやJPモルガンとは資金の許容が範囲があまりにも違いすぎます。投資を行う場合は十分に注意するようにして下さいね。
最後に、どうやって原油投資をすればよいのか簡単にご紹介しておきますね。
原油に投資をする方法は、
- WTI原油先物
- WTI原油のCFD
- 原油関連の国内株式
- 原油関連の海外株式
- 原油関連のETF
など、国内でもけっこう選択肢はあるのですね。
国内の証券会社なら楽天証券でひととおりの原油関連を取り扱っています。楽天IDを持っている方なら、口座開設も簡単です。
WTI原油や米国株式のCFD取引なら、XM Tradingで手数料も無料・。レバレッジをかけて取引できます。海外業者になりますが、XMは日本人投資家が多いので安心です。
市場心理、投資家心理は実に複雑でかつ敏感です。市場がどう動くか読むのは容易ではありません。何がきっかけとなって再び原油売りが加速するか、それは誰にも予測できないことです。
ただ、仮に原油の需要がリセッションによって低下したとしても、「需要 vs 供給」で見た限りでは原油価格が上昇する可能性は十分にあるといえます。原油の状況を深堀りすればするほど、上昇するとしか思えない材料が満載だからです。そう考えれば、一時的な急落はむしろ買いのチャンス?と見ることもできます。
あくまでも、最終的には個々の判断によります。原油投資のメリット・デメリットを十分に理解した上で、原油ならではのボラティリティを上手く活用していきましょう。

