化石燃料と呼ばれるエネルギーは、原油と呼ばれたり石油と呼ばれたりしています。原油や石油から、さらにガソリンや軽油など、さまざまな名称で呼ばれる燃料があります。
そもそも原油と石油の違いは何なのか?軽油とガソリンはどう違うのか?各燃料に違いがよくわからない方は多いでしょう。
今回は、原油と石油の違いや、ガソリン、軽油、重油など燃料の種類をわかりやすく解説していきます。原油について知ることで、脱炭素やカーボンニュートラルにおいても役に立ちます。ぜひ、参考にしてみて下さい。

原油とは何なの?石油とは違うの?

原油とは地下が取れた天然の油のことです。
石油との違いなど、簡単にわかりやすく解説していきますね。

原油とは、
地下からとれる天然資源のことで、ガソリンや灯油などあらゆる石油製品の原料となる油です。
100%天然の原油を精製して、用途に応じて様々なタイプの燃料がつくられているのです。原油そのものを一般の消費者が使うことはありません。ガソリンや灯油などに商品化された燃料を使っています。
原油と石油は基本的に同じ意味になり、原油を石油と表記することも多いです。

原油は化石燃料と呼ばれる天然資源です。石炭や天然ガスも化石燃料に分類されています。
化石燃料とは、
動物や植物、プランクトン、バクテリアなどの死骸が何億年もかけて地中の奥深くで化石となり、熱や圧力で分解され燃料資源へと変化したものをいいます。

化石燃料には個体、液体、気体と3つの形態が存在します。
- 個体 → 石炭
- 液体 → 原油・石油
- 気体 → ガス
となって蓄積されていったのです。
化石燃料は、おもに中東、ロシア、米国、カナダ、中国、オーストラリアなど採掘できる地域が限られているのが特徴です。
電力や自動車の燃料として使われる化石燃料は、現代の生活において必要不可欠な重要なエネルギーとです。しかし、燃焼すると大量のCO2を発生するデメリットがあります。
CO2の排出量の増加によって地球の温暖化が進み深刻な環境問題となっています。
近年では、化石燃料からCO2を排出しない再生エネルギーへと徐々に移行が始まっているのです。
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原油と石油の違いは、原油は地中から採掘された100%天然の資源を指すのに対して、石油は石油製品全般を指す場合もあることです。
原油も石油も本来は同じ意味になるのですが、灯油のことを石油と言ったり、石油精
製会社のことを石油会社と言ったりします。
石油精製品 | 燃料の名称・用途 | 用途の例 |
LPガス(プロパン、ブタン) | 一般家庭用、工業・産業用 | 調理、暖房機器、タクシーの燃料 |
ガソリン | レギュラー、ハイオクガソリン | 自動車、バイク、トラックの燃料 |
ナフサ(エチレン、プロピレン) | プラスチックなど化成品の原料 | ペットボトル、電化製品、日用品 |
灯油(石油) | 白灯油、ケロシン | 暖房機器、航空機の燃料 |
軽油 | ディーゼル | 大型車、農業・建設機器の燃料 |
重油 | A重油、B重油、C重油 | 農業・工場のボイラー、船舶の燃料 |
潤滑油・その他 | マシン油、タービン油など | 自動車・機械の潤滑油、アスファルト |
上図の一覧が主な石油製品です。これらは、すべて原油から精製されているのですね。
産出国で採掘された原油は、日本国内に輸送されたあと蒸留・分解されてさまざまな石油製品へと変わります。蒸留する温度によって、純度100%の原油からLPガス(プロパンガス)ができたり、ガソリンできたりするのです。


大まかに見てもわかるように、
原油がないと現代の暮らしは成り立ちません。
原油はとても重要なエネルギー資源なのです。

ガソリンの種類について詳しく教えて。
いつも気になってたんだ。

ガソリンの種類は、普通自動車の燃料として使われるレギュラーガソリン、スポーツ
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レギュラーは、一般的に最も利用されている普通自動車向けのガソリンです。普通自動車以外でも、原付やバイク、中小型トラックとほとんどの車・バイクがレギュラー仕様となっています。
レギュラーの99%が自動車の燃料向けで、一部、小型航空機や工業機器・塗料・クリーニングなどに使われることもあります。
ハイオクよりは安価、軽油よりは高くなるのが特徴です。

ハイオクとはレギュラーよりもオクタン価が大きいタイプのガソリンです。輸入車やスポーツカーなどの燃料に使われています。購入単価はレギュラーよりも若干高価になります。
オクタン価が大きいとどうなるかというと、ノッキングなどの異常燃焼が起きにくいため、エンジンの性能を良好に保つため燃費が良くなるのです。
ハイオクを使う自動車は、もともとハイオク専用の高出力エンジンが搭載されています。

軽油とはディーゼルとも呼ばれるガソリンの種類です。大型トラック、バス、ダンプ、中小型の船舶など、ディーゼルエンジンを搭載した車の燃料に使われています。
大型車以外でも、トラクターやコンバインといった農業機器、工場や倉庫の設備や機器なども軽油が燃料となる場合が多いです。
レギュラーよりも安価で燃費がいいのが軽油の特徴で、普通自動車でもディーゼルエンジンが搭載されていたりします。ただし、CO2の排出量が非常に高いため2030年あたりから販売停止となる国が増えてきます。
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ガソリンスタンドでは灯油も給油できますよね。灯油はストーブやヒーターなど暖房機器に使われる燃料で、灯油のことを石油、ホワイトガソリンと呼ぶこともあります。
そもそも灯油とガソリンは違うのか、と疑問に思う方もいるでしょう。間違って、車に灯油を給油してしまう方もいるようです。自動車に灯油を入れた場合は燃焼力が弱いためエンジントラブルを生じてしまいます。
灯油よりもガソリンの方が揮発力・燃焼力に優れているため、暖房機器にガソリンを使うのは非常に危険ですので注意しましょう。
灯油は大きく白灯油とケロシンの2種類あります。
白灯油は暖房機器に使われる、一般的な灯油のことです。ケロシンは、純度が高い灯油のことで燃焼性が低めで気温の変化に強いのが特徴です。温度格差が激しい航空機の燃料に使われています。

原料は同じ原油でも、用途に応じてガソリンにも
種類があるのですね。

重油って何なの?重油って聞いても
まったくイメージできないんだけど。

ですよね。重油は大型船舶とかに使う
特殊な燃料なので、ピンとこないものです。
では、重油について見ていきましょう。

重油とは、ガソリンなどで原油を蒸留した後に残る、黒いどろどろした残油のことです。「重い油」と書くように文字通りにヘビーな燃料で、大きな動力を必要とするものに使われています。
その他の燃料に比べると、燃焼の持続性が長く安価であるため大量に取引されているのが特徴です。
重油には、A、B、Cと3つのタイプがあります。

A重油は残油の比率が少ない重油のことで、90%は軽油が混ぜてあるタイプです。粘度も弱めでどちらかというと、軽油に近い感じですね。
中小規模の工場や倉庫、会社の暖房や機器・設備、ホテルや飲食店、学校、クリーニング工場などのボイラーの燃料として使われています。他にも、ディーゼルエンジンの小型船舶、ビニールハウスなどでも使われています。

B重油は、A重油よりも残油比率が大きく、C重油よりは粘度が弱い重油のことです。A重油とC重油の中間的な役割をする燃料です。
ディーゼルエンジンの中型・大型船舶や、大型ボイラーの燃料として使われていました。現在ではC重油を代替えするケースが増えていて、需要が低減しています。

C重油とは、残油比率がかなり大きい重油で不純物が多い一番安価な燃料です。通常はA重油よりも3割程度の価格が設定されています。
安価であるうえに、非常に粘土が高く燃焼時間が長いため、大規模な工場や倉庫の動力、大型船舶や火力発電所の燃料、アスファルトの素材として使われています。

再エネで課題となっているのが重油にかわるクリーンな燃料です。
大量のエネルギーを必要とするため、
現時点では再エネでは限界があるのです。
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原油からプロパンガスをつくってるの?
意外だよね。LPガスについて知りたいな。

LPガスは、持ち運びできることが大きな特徴ですね。
どんな種類があるのか見てみましょうか。

LPガスは「プロパン」「ブタン」と呼ばれる液体のガスをタンク、ボンベや缶に内蔵したものです。天然ガスから精製されるLPガスと、原油から精製されるLPガスと2通りの精製方法があります。
工場。アパートやビル、病院、商業施設に設置される大型のものから、アウトドアや緊急用の小型のものと大小さまざまなサイズがあります。カセットコンロ用のガスもLPガスの1種です。
使用する際に液体から気体へと変わります。

工業・産業用で最大のサイズだとで50トン分のガスが内蔵されています。長さ3m~5m程度の巨大なLPガス他タンクがあります。これを、このままタンクローリー車で輸送されています。
ボンベの場合だと最大で3トン~5トン、長さ1m~3mぐらいのLPガスが使われています。

一般家庭用のLPガスは縦置き型のボンベで、2kg~最大で50kg、高さが30cm~1.4mぐらい。よく見かけるタイプのボンベですね。
暖房用、電力用、給湯用、調理用と用途に合わせてサイズが選べるようになっています。

知らない方も多いと思われるのが、タクシーの燃料です。タクシーの燃料にはガソリンではなくLPガスが使われています。ほぼ90%のタクシーがLPガスです。
LPガスを利用する理由は、ずばりLPガスの方がコストが安いからです。ビジネスで車を走らせるタクシー会社にとって燃料コストを抑えることは必須となります。
ガソリンとは別で、LPガス専用のスタンドでガスを補充できるようになっています。車のトランクにLPガスボンベを搭載しているドライバーもいるのです。
緊急用プロパン・発電装置

各自治体や大病院などでは、緊急用のLPガスを備えている場合が多いです。電気やガスが復旧するまでの間のみ、LPガスが活用されています。

緊急時のために、プロパンガスで発電できる発電機器もあり、万が一の時にはプロパンガスが活躍するのです。
キャンプやバーベキューなどアウトドア用に小型プロパンガスを使うケースもあります。

プロパンガスは配管がなくても使えるから、
災害時用に重宝されているのです。

原油からプラスチックも製造されてるんだね。
プラスチックの原料になるナフサって何なの?

では、最後に原油から製造されている
ナフサについて触れておきましょう。

ナフサはプラスチックなどの化成品の原料のことです。ナフサからペットボトルや電化製品など多彩な種類の化成品が製造されます。
ナフサは大まかに「軽質ナフサ」と「重質ナフサ」に分類することができます。

軽質ナフサ
- エチレン
- プロピレン
- ブタジエン
重質ナフサ
- ベンゼン
- トルエン
- キシレン
軽質ナフサとは、蒸留沸点が25度~130度、石油精製品の中でLPガスのつぎに軽い燃料です。揮発性に優れているため、高オクタン価のハイオクガソリンに軽質ナフサが混同されています。
ガソリンに使われなかったナフサは、分解・精製されてエチレン、プロピレン、ブタジエンといった化成品の原料となります。

代表的な化成品には、プラスチック、ペットボトル、レジ袋、ごみ袋、テープ、自動車部品、電子部品などがあります。
重質ナフサは、蒸留沸点が80度~180度で、軽質ナフサよりもやや重くなる燃料です。レギュラーガソリンや軽油に混ぜられる燃料でもあります。
ガソリンに使わなかった分を分解し、ベンゼン、トルエンなどの化成品の原料となります。

重質ナフサから製造されるおもな化成品には、合成繊維、合成ゴム、タイヤ、接着剤、塗料、合成洗剤、日用品、医薬品などがあります。

思った以上に実に多くの物が
原油から製造されているのです。
今回見てきたように、単に燃料としてではなく、私たちの日常生活は原油から製造された製品に囲まれていることがわかります。原油が必要不可欠な資源であることを、改めて思い知らされた気がしますね。
しかし、現在のように石油製品に囲まれた暮らしを、ずっと続けていくわけにはいかないのです。原油の主な成分は炭化水素です。他にも、窒素化合物や硫黄化合物など燃焼することで有毒ガスを生じる成分が多く含まれています。
確かに原油から再エネへの移行が進んではいますが、今すぐ、原油にかかわるものすべての利用をやめることは不可能です。毎日の暮らしがあります。しかし、徐々に減らしていくことは可能です。
脱炭素やカーボンニュートラルは国や企業だけが取り組む問題ではなく、一般消費者1人1人が意識することで実現していけるのだといえるでしょう。
今回の記事が、原油について、脱炭素について考えるきっかけになれば幸いです。

