世界で最も大きい石油会社、利益を得ている石油会社はどこでしょうか。ぱっと思いつくのがエクソンモービルやロイヤルダッチシェル、最近よく話題になるのがサウジアラビアのサウジアラムコ。国内なら出光やENEOSなどが有名ですね。
2020年から2022年にかけては、コロナウイルス、ロシア・ウクライナと災難が続いたこともあって、各石油会社の様相もだいぶ変わってきているようです。
今回は、いわゆるオイルメジャーと呼ばれる、世界最大手の石油会社ランキングをご紹介していきます。エネルギー高の恩恵を最も受けているのはどこなのか、気になる方はちょっと目を通してみて下さい。

オイルメジャーとか石油メジャーってよく聞くけど
どういう意味なの?

オイルメジャーとは、世界最大規模のトップの
石油会社のことをいいます。
オイルメジャーの基礎知識を最初に軽く見ておきましょうか。

オイルメジャーとは、
石油の探鉱・生産・輸送・生成・販売までを一貫して行い、かつ世界シェアの上位にランクインする最大手石油会社のことを総称したものです。資本力・政治力(政治への影響力)が巨大となるのが大きな特徴です。
オイルメジャー(Oil Major)のメジャーとは、メジャー/マイナーのメジャーのことで最大手で有名な企業のことを意味しています。オイルメジャーは国内では日本語風に石油メジャー、ガソリンメジャーと呼ぶこともあります。

もともと「オイルメジャー」は、OPECが実権を握る以前の欧米石油資本に対して使われていた言葉です。セブンシスターズと呼ばれる7社の企業のことを指していました。
現在では、中東、中国など欧米以外の企業の存在感も増しているため、世界シェア率の高さでいくとメジャーな企業の顔ぶれも変わってきています。
その時々で、企業が統合したり資本・時価総額、生産高が変動したりと、どの企業がオイルメジャーに属するのかは、時代・時期によって異なります。メディアやアナリストによってもオイルメジャーの解釈には若干の違いがあるのです。
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1940年代~70年代、石炭から原油へとエネルギーの移行にともなって、中東周辺で開発を進めていた石油会社7社が原油市場をコントロールしていました。

イラン、イラク、サウジアラビアなどの国営の石油会社がなかった時代のことです。中東をしきっていた石油会社7社は、急速に拡大する原油市場において莫大な富を築きセブンシスターズと呼ばれるようになりました。
セブンシスターズと呼ばれた企業は、
- Anglo-Iranian Oil Company(現在のBP/英国)
- Gulf Oil(後にChevronと合併統合/米国)
- Royal Dutch Shell(現在のShell/オランダ・英国)
- Standard Oil Company of California(現在のExxon/米国)
- Standard Oil Company of New Jersey(現在のExxon/米国)
- Standard Oil Company of New York(現在のExxon/米国)
- Toxaco(後に石油部門のみChevronと統合/米国)
以上の7社です。これらの企業が最初のオイルメジャーです。
Standard Oil Company の株式証券

ちなみに、Standard Oil の設立者はジョン・D・ロックフェラー。米国の巨大な石油産業の創始者です。ロックフェラーのStandard Oilからその他の石油会社も派生していきました。

石油産業の成功によって莫大な富を築き、「米国の石油王」との名を馳せた人物です。ロックフェラーの資産総額は1916年には米国経済の約2%にあたる240億ドル(約3兆円)に達し、米国史上で初めて兆単位を記録した資産家となりました。
かつては、欧米のオイルメジャーが石油市場の90%を占めていたのですが、1980年代あたりからOPECの勢力が強まっていきます。
OPEC加盟国は、次々と国営の石油会社を立ち上げてオイルメジャーに対抗していくのです。
また、中国やロシア、カナダなどOPECとは別の流れで石油市場に参入する国・企業が増えていき、石油会社の競争が激しくなっていきます。

1990年代になると、オイルメジャー同志の合併・統合が行われ、6社の国際巨大石油資本がスーパーメジャーと呼ばれるようになりました。
スーパーメジャー6社
- Exxon Mobile(エクソンモービル/米国)
- BP(ビーピー/英国)
- Royal Dutch Shell(ロイヤルダッチ・シェル/オランダ・英国)
- Chevron(シェブロン/米国)
- Conoco Phillips(コノコフィリップス/米国)
- Total Energy(トタルエナジー/フランス)
上記6社は、近年においても変わらずオイルメジャーに分類されています。
近年では、欧米のスーパーメジャーに加えて、新たにOPECなどの大手国営石油会社が新セブンシスターズ(新オイルメジャー)として名前を連ねるようになりました。
新セブンシスターズと呼ばれる国営石油会社は以下のとおりです。
新セブンシスターズに属する国営石油会社
- Saudi Aramco(サウジアラムコ/サウジアラビア)
- Petronas(ペトロナス/マレーシア)
- Petrobras(ペトロブラス/ブラジル)
- Gazprom(ガスプロム/ロシア)
- PetroChina(ペトロチャイナ/中国)
- National Iranian Oilイラン)
- PDVSA(ペデベーサ/ベネズエラ)
他にも、
- Pemex(ぺメックス/メキシコ)
- Equinor(エクイノール/ノルウェー)
- ENI(エニ/イタリア)
などの国営石油会社の存在が際立ってきています。

OPEC系の大手石油会社と区別するために、
あえて欧米の石油会社のみを
オイルメジャーと表現することもあります。
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じゃあ、最近でいうオイルメジャーでは
どの石油会社がトップなのかな。

では、最新の売り上げデータを参考に、
オイルメジャー・世界ランキングをご紹介していきます!

原油の生産高や売り上げ高、企業の株価などはつねに変動しています。どの時期を目安にするかによって、ランキングは多少前後していきいます。
今回のランキングは、2022年11月23日時点での約1年間の決算データ(2021年Q4~2022年Q3)を参考にしています。
大手石油会社の世界ランキング(純利益ベース)

- Saudi Aramco(サウジアラムコ/サウジアラビア)
- Equinor(エクイノール/ノルウェー)
- Exxon Mobil(エクソン・モービル/米国)
- Shell(シェル/英国・オランダ)
- Petrobras(ペトロブラス/ブラジル)
- Chevron(シェブロン/米国)
- Total Energies(トタルエナジー/フランス)
- Gazprom(ガスプロム/ロシア)
- PetroChina(ペトロチャイナ/中国)
- ENI(エニ/イタリア)

Saudi Aramco Offisial Site (英語版)
サウジアラムコは、サウジアラビアを拠点とする国営石油会社です。原油埋蔵量・原油生産量において圧倒的に世界トップを独走する原油界のキングです。
1933年にスタンダードオイル(Exxon)の開発拠点・支社として設立、1938年の大規模な油田の発見を皮切りに自動車の普及とともに急拡大していきました。

1962年には5000億バレルの歴史的生産高を記録し、1972年に世界で初めて年間で1000億バレルの原油を輸送しています。1980年サウジ政府によってサウジアラムコは国営石油会社となり現在に至ります。
直近1年間は純利益3,033億ドル、時価総額2兆ドル。まったく無敵のトップランナーぶりがうかがえる規模です。
世界最大のガスパイプライン

脱炭素時代に向けて、サウジアラムコは石油からCO2排出が少ない天然ガス生産へと移行していく方針でいます。砂漠に敷かれたMSGと呼ばれる世界最大のガスパイプラインでは、1日で英国とフランスの年間ガス消費量を上回る天然ガスが輸送可能です。
環境保全、アンモニア・水素の開発に注力し、日本でも沖縄のサンゴ・マングローブなど自然保護に貢献しています。
Saudi Aramco株式銘柄コード

エクイノールはノルウェーを本拠地とする北欧最大の石油会社。1972年にノルウェー政府の国営石油会社スタトイル社として設立され、2001年に民営化されました。(大株主はノルウェー政府)
北海を中心にエネルギー開発を行い、北海大陸だな油田の約4割をエクイノールが管轄しています。欧州のエネルギー供給において非常に重要な役割を果たしているのです。

ノルウェーの原油生産高は世界13位、埋蔵量では19位。天然ガス生産量は世界8位。原油と天然ガスの埋蔵量・生産量において欧州ではロシアに次いで2位にランクインしています。
2021年12月期には909億ドル(約11兆円)の売り上げ高を記録、その後ウクライナ侵攻による原油高にて2022年も最高記録を更新しています。
12月期から22年第3期までの約1年間の売上高は707億ドル、時価総額は111億ドル、欧州の脱ロシアの恩恵も受けていると見れます。

また、エクイノールの好業績に貢献しているのは、原油・ガスもさることながらオフショア風力発電の存在があります。2009年世界初の浮体風力発電を開発、2017年にはスコットランドに本格的な浮体式の商用風力発電を設置、英国とドイツと100万世帯分の電気を創出しています。
エクイノール株式銘柄コード

Exxon Mobil Official Site(English)
さて、3位にランクインするのが、元祖オイルメジャー・スタンダードオイルの流れをひくエクソン・モービルです。
1999年に石油会社のエクソンと、オイルメーカー・モービルが統合してエクソン・モービルとなりました。
エクソンもモービルも前身はスタンダードオイル系列の会社です。スタンダードオイルは1870年設立、当時米国でブームになりつつあった個人経営の油田・製油所をロックフェラーが統合して形成されました。

モービルはもともとバキュームオイルを製造・販売するメーカーで、1879年にスタンダードオイルが買収したのでした。
1878年には、米国の95%の油田がスタンダードオイルが占有する状態。1911年に独占禁止法によって、スタンダードオイルは34社に分割、そこからシェブロンなど米大手石油会社が派生していきます。
エクソン・モービルは日本での歴史も古く、1893年に横浜に支店を開設し灯油・潤滑油の販売をスタートさせています。
12月期から22年第3期までの約1年間の売上高は700億ドル、時価総額は4650億ドル、時価総額ではサウジアラムコの次に大きく世界2位にランクインします。

エクソン・モービルでは、水素とエコプラスチックの開発が気候変動の解決策になるとの考えです。ITテクノロジーとの連携によってエネルギーや素材の研究を進めています。
エクソン・モービル株式銘柄コード

シェルは初代オイルメジャー・セブンシスターズ時代から、唯一名前を残している偉大なる英国・オランダの石油会社です。
2021年までは、シェルの社名はロイヤルダッチシェルで、英国とオランダに本社を構える2重構造となっていました。2021年11月から英国本社1つに統合され、社名をシェルとしています。
1870年代、ロンドンのサミュエル商会が、横浜の海外で拾った貝殻から工芸品を作り始めたのがシェルの始まり。横浜に支店を設立したサミュエル商会は、アジア・欧州間の輸出事業を展開していきました。

1900年に石油・石炭事業本格的に立ち上げ、1907年にフランスの石油貿易商ロスチャイルドとオランダの石油会社ロイヤルダッチと3者統合にてロイヤルダッチ・シェルが誕生したのです。
米国、アジア、中東、欧州、ロシアと領域の幅広さがシェルの強みです。再エネでは中東・欧州を中心にメガソーラーを設置し、着々と次世代に備えています。

シェルの21年4期~22年3期までの利益は646億ドルで世界4位。時価総額は2,000億ドル。2021年12月期の決算200億ドルの数倍の利益を記録しています。
Shell 株式銘柄コード

Petrobras Official Site (English)
2021年からコロナ回復とともに、売り上げを急激に伸ばしているのがブラジルのペトロブラスです。
ペトロブラスは1953年に油田採掘を目的に設立、ブラジル政府が出資するラテンアメリカ最大の石油会社です。日本語ではブラジル石油公社とも呼ばれています。

1997年まではブラジルの公営石油会社として独占を認められていました。原油・天然ガスの探索・採掘、生産から精製・輸送までを行い、とくに高い評価を得ているのが海底の採掘技術です。水深2000メートルの海底にて原油を採掘する技術を有しています。
1974年に発見されたカンポス油田が、ペトロブラスのブラジル原油生産の約85%を占めており、ペトロブラスの安定した原油供給力に貢献しています。
2021年後半から約1年間の総利益は534億ドルで5位にランクインします。時価総額695億ドル。時価総額では世界17位となるにもかかわらず、シェブロンやBPよりも売り上げを伸ばしている点に注目です。
ペトロブラス株式銘柄コード

Chevron Official Site (English)
シェブロンは米国カリフォルニアを本拠地にする有名なスーパー・オイルメジャー。1879年設立、Pacific Coast Oil Co.(パシフィック・コーストオイル)として谷合の小さな精油所からスタートしました。
1900年にスタンダードオイルが買収し、巨大なネットワークに参入し大手の道を進みます。1911年のスタンダードオイルの分割によって、スタンダードオイル・オブ・カリフォルニアで独立しました。

1932年にサウジアラビア政府との提携により、一躍秀でた存在になります。合併・統合を重ねた末、2005年にシェブロンと社名を変更して現在に至ります。
直近1年間の純利益は470億ドルで世界6位、時価総額は3,562億ドルでExxonに次いで3位にランクインします。2021年~2022年にかけて、バフェットがシェブロン株を大量に買い増したことで気になる存在です。

TotalEnergy Official Site(English)
トタルエナジーズはフランスのオイルメジャーで、1942年に国営石油会社として設立されました。石油化学の研究・開発で世界トップ、採掘から販売までを行い世界17,000か所にガソリンスタンドも経営しています。
1970年代にかけてセブンシスターズに次ぐ8番目のオイルメジャーとして名をはせました。脱化石燃料では、大手メジャーの中では群をぬいて突出していることがトタルエナジーの大きな特徴です。
CO2の回収・貯留事業、食品メーカーとリサイクル素材の開発、EVの充電設備や水素製造への出資を積極的に行っています。
日本でも支社を構え、自動車・工業用の潤滑油などを販売。国内大手と大規模な最エネプロジェクトに取り組んでいます。
トタルエナジーズ株式銘柄コード

Gazprom Official Site(English)
もう1社、原油、天然ガス、エネルギーといえばトップ10によくランクインするロシアのガスプロムです。
ロシア政府保有のガスプロムは、天然ガスの生産・供給においては世界最大、サウジアラビアと並ぶ原油大国です。実際には半官半民の企業なのですが、国営に分類されています。
ソビエト連邦時代のガス工業省が、1993年にガスプロムへと転身したかたちになります。2004年に国営石油会社ロスチナフを吸収合併、2005年に石油精製大手ジブネフチの株式を72%取得し、巨大企業へと拡大していきました。

2008年のエネルギー高騰時には、時価総額3,400億ドルを記録し世界3位にランクインするまでに成長。
直近1年間の利益は、380億ドルで世界8位。時価総額は730億ドルで14位となります。ウクライナ対立で経済制裁を受けながらもこの収益、恐るべしです。
ガスプロム株式銘柄コード

米大手エクソンの最大のライバルといわれるのが中国のペトロチャイナ。親会社の中国国営石油から、1999年に生産・販売部門の民営化をはかり創業されました。採掘から石油精製、流通に携わっています。
ペトロチャイナは民間企業でも、親会社が国営となるため、ペトロチャイナも国営に分類されています。

NYSEにも上場していますが、2022年8月に上場廃止を申請しているところです。
ここ1年間の利益は330憶ドルで世界9位、売上高は4,800億ドルで2位です。時価総額は約2兆ドルとなり、売上ベース、時価総額ベースで見ると世界1、2位にランクインする規模です。エクソンがライバル視するのも最もだといえます。
ペトロチャイナ株式銘柄コード
0857/Hong Kong Exchange PCCL/

ENIは、1953年にイタリア政府100%の出資で設立されたオイルメジャーです。
1995年以降は、政府の保有株式が売却され、政府保有比率は30%程度に減少しています。ほとんど民間企業の要件をそろえているのですが、イタリア政府との結びつきが強いこともあって国営石油会社とみなされているのです。

石油と天然ガスの探査から販売までを行い、発電や電力販売、化成品、金融・フィンテック事業も手掛けています。新時代のニーズに応えるべく自然エネルギー、小売り、e-モビリティに特化した事業の立ち上げを計画中です。
時価総額は510億ドルで26位となるものの、利益は280億ドルで10位にランクインしています。
ENI 株式銘柄コード

ちなみに国内・海外の石油関連に投資をするなら、
以下の記事で証券会社や商品をご紹介しています。
ぜひ、参考にして下さいね。


2021年後半あたりから、コロナ回復にともなって景気がよくなり物価が上昇し始めていました。景気が回復するにつれ、原油の需要も向上していたのですが、OPECプラスはコロナショックの価格暴落の経験から供給量の手綱を緩めませんでした。
原油価格はタイトな需給関係によって、上昇していたところにロシア・ウクライナ問題が発生。原油は見る見るうちに高騰したのです。エネルギー高騰の恩恵を受けているのが、石油関連の企業です。
とくにオイルメジャーは記録的な売り上げを更新していることで注目されています。現在の原油価格(WTI先物)は100ドル以下と低迷してはいるものの、それでも中長期で見れば全く高値圏にあります。
2023年以降は、ロシア・ウクライナ、欧米の経済政策、ロシアへの制裁の動きしだいで、今後のオイルメジャーかつ国内石油会社の動向も激しく変動していくでしょう。