脱炭素の時代に先駆けて、再生エネルギーへの投資が注目されています。
再生エネルギーといえば、太陽光発電や風力発電に関連したETFや株式など様々な投資商品がある中、いったいどんな商品に投資しておくべきか悩む方は多いでしょう。
そこで、ぜひ選択肢に入れておきたいのがプラチナです。
インフレ対策による金利上昇から貴金属が売られる傾向にある中でも、今後の脱炭素への需要から最近プラチナが買われ始めているのです。なぜプラチナなのでしょうか。
今回は、プラチナ価格の現状の動きやプラチナが脱炭素で果たす役割をわかりやすく解説しましょう。どうぞ、今後の投資計画にお役立て下さい。

最近プラチナの価格が上がってるみたい。どうしてなの?

プラチナはEVや電池、水素エネルギー設備に使われます。
脱炭素に向けて、最近になってプラチナの価値が見直されているのです。
プラチナは排気ガス・CO2を触媒(浄化)する機能を有しています。

2022年9月になってから、プラチナの価格は著しい上昇を見せています。一般的には、金利が上昇すると金利がつかない貴金属は売られる傾向にあります。
しかし、最近になってプラチナは今後の需要が高まるとの見込みから、貴金属が総じて売られている中でも底堅い動きを見せているのです。まず現在のプラチナの価格を簡単に見ておきましょう。
NY市場のプラチナ先物は、9月1日は796ドルの安値をつけました。800ドルを割ったのは2020年3月・4月のコロナショック以来です。ロシア・ウクライナ問題から、需要低下が懸念されたためです。
ところが、9月に入ってからのプラチナは価格が下がりすぎたこともあって、徐々に上昇に向かい始めています。
プラチナ先物価格 NYMEX(4Hチャート)

9月1日からは堅調なペースで連日の上昇を繰り返し、9月21日には943ドルの高値を付けていました。
ドルで見ると分かりづらいかもしれませんので、日本円でのプラチナの価格も見ておきましょう。
国内のプラチナ価格 三菱マテリアル
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国内のプラチナ現物の取引価格、は貴金属業者によって毎時間ごとに提示されます。業者ごとに若干価格に差はあるのですが、現在の価格は4,780円程度です。
ちなみに国内に上場するプラチナ先物は白金先物と呼ばれています。現在、4,100円あたりで取引されています。
国内のプラチナ価格は現物も先物も、NYやロンドンでの取引価格が基準になっていて、ほぼ連動して価格は動いています。
さらに、プラチナがいかに注目されているかを知るために、その他貴金属の価格と比較してみましょう。
プラチナと貴金属価格 比較チャート(4Hチャート)

9月1日を基準にすると、プラチナの騰落率は10%を超えています。次にシルバー、パラジウムと続き、金が最も売られていてマイナス3%に下降しているようです。
パラジウムもプラチナと全く同じ用途(排気ガス触媒)で使われる貴金属です。脱炭素向けの需要が期待され、これまではパラジウムの方が勢いをつけて上昇する傾向にありました。
しかし、ここで考慮したいのがパラジウムはすでに価格が高騰しきっているのに対して、プラチナはパラジウムの影に隠れていた感があり、長期的にはまだ底値付近で動いていることです。
改めてプラチナの価値が見直されていて、これから上昇に向かう可能性が高いと見ることができます。
脱炭素系に投資するなら、プラチナは今最も買い時だといえるのです。
果たしてプラチナが今どれくらい買い時なのか、これまでの値動きをその他貴金属と比較してみましょう。
プラチナ価格の推移 20年間

20年という長い期間でみると、今プラチナはほとんど底値です。
ただ、2020年3月コロナショックの時には560ドルまで下がっていますので、800ドルを今後割らないと断言はできないのですが、コロナショック以降すぐに価格は順調に持ち直しています。
ロシア・ウクライナの状況が悪化して本格的なリセッションに突入にした場合、またはプラチナに代わる代替え素材が開発された場合は価格が下がる可能性があります。
プラチナ価格とその他貴金属の比較チャート 20年間

10年間の貴金属の騰落率を比較してみると・・・
2010年、世界経済がリーマンショックから回復に向かい始めた頃、安全資産として名高い金・銀が勢いをつけて上昇していますね。
回復に向かうに従って、安全資産である貴金属の価格は低下。代わりに、パラジウムが脱炭素銘柄として2018年以降に大きく高騰しています。
プラチナは2014年あたりからひたすら下降。かつては金よりも高値をつけた貴金属であるにもかかわらず、かなり売られた時期が継続していました。
そして、ようやく最近になってプラチナの価値が見直され始めているのです。
今、プラチナは最も安値圏で推移している貴金属だといえます。もし、今後の需要が期待されていて価格の上昇が見込めるのであれば、今ほど買い時だといえるタイミングはないでしょう。

状況によっては、800ドル台に戻る可能性もあり、
下がるタイミングを待ってみてもいいかもしれませんが、
再びこれから900ドルを切るかはかなり微妙です。
投資をするからには、ではなぜプラチナだけ今底値にきているのか?なぜここまで下がってしまったのか?その理由をしっかり確認しておきたいですよね。
プラチナの価格低下を促した主な理由は、ディーゼル車が廃止に向かうことからきています。
ディーゼル車とは、
ガソリンではなく「ディーゼル/軽油」と呼ばれる燃料で走る車のことです。

ディーゼルの特徴は、ガソリンよりも安価で高燃費となることです。当然ながら、燃費がよく安価なディーゼル車はガソリンよりも好まれる傾向にありました。
ガソリンではガソリンエンジンを使い、ディーゼルではディーゼルエンジンを使います。
ディーゼルエンジンは排ガスを大量に排出するため、プラチナが排ガス触媒の役割を果たしていたのですね。
しかし、脱炭素・排ガス規制によってディーゼル車の製造量は大幅に減少することになったのです。2030年あたりをめどに販売停止を予定する国が続出しました。深刻な地球温暖化への対策として、今後は、ガソリン車の製造が制限され、EVへの移行が推進されています。
「ディーゼル車の廃止 = プラチナの需要がなくなる」と極端に解釈されことがプラチナ下降のおもな原因になったといえます。
プラチナは金や銀のように安全資産としての側面もある一方では、工業用のイメージが強かったことから大きく下降することになったのです。

でも、プラチナは工業用の価値だけじゃないよね?

そうなのです。ここで、注目しておきたいのがプラチナは、
単純に貴金属としての価値も合わせ持っている点です。
需要低下への懸念から、プラチナの貴金属としての価値までが過度に低評価される結果となったようです。
パニック売りのようなカタチで売りが売りを呼んでしまったといえるでしょう。
ガソリン車からEVへ これからの車は電気で走る!EVの特徴・仕組み・種類

プラチナの脱炭素への需要を詳しく教えて。

では、これからプラチナがどのように
脱炭素社会で役に立つのかを見ていきましょう。

なぜ最近になってプラチナが上昇しているのか?プラチナが脱炭素で果たす役割を知れば、最近の上昇も納得できるでしょう。
2015年のパリ協定では、地球の温度上昇を抑えるた197か国の合意のもとで、CO2排出量の削減に取り組むことが要請されています。最終的なゴールは2050年のカーボンゼロ。中間目標として、2030年に40%~50%以上のCO2削減が求められているのです。
そもそもパリ協定とは?脱炭素・カーボンニュートラルが地球温暖化を解決する!
中間目標に向けて、すでに日本をはじめ多くの国でEV(電気自動車)や太陽光発電、風力発電などの普及が進められています。
CO2のおもな要因は石油・石炭の燃焼です。
脱炭素に向けて、以下のようにエネルギーが移行していくことが想定されています。
- ガソリン車・ディーゼル車 → EV
- 石炭・石油の火力発電 → 再生エネルギー、クリーンエネルギー
プラチナはEVやクリーンエネルギーにおいて必要不可欠な素材となるのです。
まず注視しておきたいのがEVにおけるプラチナの需要です。
EVには、FCVと呼ばれるタイプの自動車があります。FCVの燃料・エンジンにプラチナが活躍するのです。FCVについて詳しく見ていきましょう。

FCVとは、
Fuel Cell Vehicleのことで水素を燃料とする自動車でのことです。日本では燃料電池車とも呼ばれています。

水素はCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。FCVは従来のガソリンのように水素ステーションから燃料を補給することができます。水素を電池にためて、電気で車を動かしますのでFCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)と呼ばれることもあります。
このFCVの製造にあたって、排気ガスを触媒するための大量のプラチナが必要になるのです。
ディーゼル車で必要だったプラチナは1台あたり数グラム程度でしたが、FCVでは約40グラムを要します。ディーゼル車が廃止になった場合でも、ディーゼル車を上回る需要が生じる可能性があるのです。
ダイムラー FCV(ドイツ)

FCVは、走行距離がEVよりも長く充電もわずか数分で完了することが大きな特徴です。とくに、長距離用の商用トラックなどに適しているといわれています。
メルセデス・ベンツのダイムラー社は、1990年代からFCVのトラックやバスの開発に着手、2020年から世界初のFCVトラックを販売開始しています。昨今では、脱炭素への取り組みが企業評価につながることから、大型車のFCVに力を入れているとのこと。
2019年にはプラグイン・ハイブリッド(電気で充電可能なシステム)を搭載したFCVの普通自動車を欧州・日本限定で販売し注目されました。米国ではEV、欧州と中国では政策による後押しもありFCVの普及が加速しています。日本でもトヨタ、ホンダ、日産、日野自動車、三菱ふそうなどがEV、FCVを販売し始めています。
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水素は自動車の燃料だけでなく、水素エネルギーとして電力にも活用することができます。水素の原料は水です。水を電気分解することで電力をつくることができるのです。
水素で電力をつくった際に発生するCO2はゼロ。しかも大量に製造することが可能で、かつ移動も容易・安定した供給につながる点で太陽光や風力をカバーすることができます。
世界最大の水素エネルギー施設(東北電力)

ただし、水素を製造する際にCO2が発生してしまうデメリットがあります。電気分解する際に使う電流に石油などの化石燃料が使われているからです。もし、再生エネルギーを介した電流であれば水素エネルギーは100%カーボンゼロとなり得ますが、現状ではまだ再エネだけで水素エネルギーをつくることが難しいとされています。
そこで必要とされるのが触媒機能を持つプラチナなのです。プラチナを水素製造装置に組み入れて、CO2を浄化することができます。
地球の70%は海洋などの水分です。空気にも水素は含まれています。つまり、水素はいくらでも入手可能なエネルギーであり、水素エネルギーに取り組む国はすでに39か国に及びます。今後の需要拡大が期待されているのです。

「水素の需要拡大 = プラチナの需要拡大」が成り立ちますので、
プラチナが改めて買われ始めているのですね。
CMEグループ(Chicago Mercantile Exchange/シカゴ・マーカンタイル取引所)によると、今後のEVへの移行においてFCVのシェア率は大きく、プラチナの需要も拡大していくとの見解です。
向こう10年間でプラチナの需要は300万オウンスを超えるだろうと予想しています。
FCVの製造台数 今後の見通し

プラチナと同じ触媒の役割を果たすパラジウムの存在がありますが、もともとはパラジウムが安価であったことから高価なプラチナからの代替えが進んだと指摘。今度はパラジウムの価格が高くなりすぎたため、パラジウムからプラチナへの移行の可能性が高いとしています。
従って、FCVの需要とプラチナの需要はイコールで推移していくと見れるのです。
加えて、欧州の脱ロシア政策によって、化石燃料から水素エネルギーへの移行が急がれる可能性もあります。ドイツは「国家水素戦略 2023年の目標」として400か所の水素ステーションの設置、2030年までに1000万トンの水素製造を784億をかけて計画しています。
欧州は約40%の化石燃料をロシアに依存していました。その分が水素に移行されれば、欧州の水素エネルギー市場の急拡大につながります。
次いで中国は1000か所の水素ステーション、100万台のFCV製造を目標にしていることから、欧州と中国を筆頭に水素エネルギー市場の急拡大が期待できるでしょう。
FCV販売台数 今後の見通し

さらに、水素エネルギー市場の拡大によって、製造コストの時間効率が上がりコスト低減につながることが予想されます。
「普及が進む → コスト減 → さらに普及が加速 → さらにコスト減・・・」
コスト減が追い風となって、水素エネルギーの普及拡大が想定どおりに進めば、プラチナはかつての高値圏2,000ドルあたりまでの上昇が期待できるでしょう。2,200ドルを超える可能性もあるかもしれません。
- 金よりも希少価値が高い貴金属であること
- ごく一部の国・地域でしか採掘できないこと
- ジュエリー・宝飾品としても金よりも好まれる場合があること
- EVやクリーンエネルギーに欠かせない重要な素材であること
プラチナの主要産出国は、南アフリカが世界シェアの大半を占めトップ、次いでロシアが2位、3位ジンバブエです。ロシア・ウクライナの対立によってプラチナの価格が高騰する可能性があります。

需要がありつつも入手が困難になれば、
2000ドル突破も期待できるかもしれません。
EVと水素エネルギーの普及拡大にともなって、需要が期待できるプラチナですが、100%必ずプラチナの需要が伸びるというわけではありません。
- 利上げ・リセッションによる経済の低迷
- プラチナの代替え素材の開発
FCVや水素エネルギーの普及で難関となっているのがコストです。中でも触媒としてのプラチナのコストがネックとなりがちです。コスト削減を計るために、実はプラチナ以外の触媒の開発が数年前から行われています。
もし、プラチナに代わる安価な素材が開発されたとすれば、当然ながらプラチナは急落する恐れがあります。

触媒には成功しても、
プラチナほどの耐食性が実現できるかは疑問でもあります。

うーん。プラチナに投資しておこうかな。
どんな方法でプラチナに投資ができるの?

では、最後にプラチナに投資する方法を
ご紹介しておきたいと思います。

プラチナに投資する方法は、
- プラチナの現物を購入する(貴金属業者・宝飾店など)
- プラチナの現物を金融商品で購入する(証券会社)
- プラチナ関連のETFを購入する(証券会社)
- プラチナ関連の株式を購入する(証券会社)
- プラチナ先物を購入する(証券会社)
- プラチナCFDを購入する(証券会社・FX業者)
と様々な方法から選ぶことができます。
プラチナ投資が初めての方におすすめなのは・・・
すぐに誰にでもできる一番簡単な方法は、貴金属業者や宝飾店などで「プラチナの現物を購入する」方法です。バーやコインで入手することができます。
現物の保有はちょっと面倒だな・・・という方におすすめなのが
「プラチナの現物を金融商品で購入する」または「プラチナCFDを購入する」方法です。
それぞれどんな方法になるのか簡単にご説明しておきましょう。
証券会社では、プラチナの現物を金融商品として提供しています。ペーパーコントラクト(データ上の取引)のみの業者もあれば、現物に交換できる業者もあります。
証券会社の口座さえ開設しておけば、いつでも好きなタイミングで、オンライン取引にてプラチナが購入できます。
売却のタイミングもいつでも自由に選べて、簡単です。
限られた資金でも、できるだけ多くのプラチナを購入したい方は、プラチナCFDがおすすめです。
CFDとは、上場している金融商品の売買価格を取引する商品のことで、FXのようなものです。プラチナCFDは、NY市場に上場しているプラチナ先物の売買価格を取引していきます。
基本的にFXのように24時間体制で取引可能です。いつでも空いた時間を活用して売買していけます。

- 取引時間/ 9:00~24:00
- 手数料/ 買付(代金の1.65%)、売付(0円)
- 維持費・保管料/ 無料
- 最低取引単位/ 1g以上、1g単位
- 現物での受け渡し/ 有
楽天証券では現物商品として、金・プラチナ・銀を提供しています。楽天証券の総合口座(株式口座)を開設すると取引できます。株式やFXとは区分されていて、金・プラチナ専用の画面にアクセスする仕組みになっています。
金・プラチナは、他にいろいろな商品があるわけではないので、取引画面も非常にシンプルで分かりやすいです。ブラウザー版・スマホ画面でも十分です。

問い合わせは営業時間内であればチャットで対応しています。
携帯からフリーダイヤルがかけれないのがデメリットでしょうか。

- 取引時間/ 早朝の1時間のみ取引できない
- 手数料/ 無料
- 維持費・保管料/ スワップポイントがマイナスでかかる
- 最低取引単位/ 0.01ロット~(1ロット50オウンス)
- 現物での受け渡し/ 無し
HotForexは海外に拠点を持つ海外FX業者です。FXと幅広い種類のCFD商品を提供しています。貴金属CFDでは金、プラチナ、パラジウム、シルバー、銅が取引できます。
貴金属以外でも、株式やETF、株価指数インデックス、原油などのCFDがあります。すべての銘柄が1つのFX口座・取引ツール(MT4/MT5)にまとめられています。海外なので入出金方法で手間取るかもしれません。

カスタマーサポートは100%日本語です。
チャットかメールで問い合わせできます。
今回見てきたように、プラチナはEVと水素エネルギーで必要不可欠な素材となり、脱炭素時代に向けて需要拡大が見込める貴金属です。水素の普及拡大にともなって、今後の値上がりが期待できるでしょう。
ディーゼル車廃止の需要低下からいったん価格が落ち込んでいる今が買いのチャンスです。
水素は太陽光発電や風力発電のように天候に左右されない安定したエネルギー。かつ、基本的に水が原料となるためほとんどの国で製造可能です。グローバルに今後急展開していく可能性があります。
カーボンゼロ・カーボンニュートラル、パリ協定2050年の目標を実現するにあたって、水素がキーポイントなるといわれています。さらに、ロシア・ウクライナから生じる不安定なエネルギー事情やロシアへの経済制裁からプラチナ高騰が狙えるかもしれません。
ぜひ、購入しやすい今の時期に、脱炭素に向けてプラチナ投資を検討してみてはいかがでしょうか。

