原油価格は380ドルまで上昇する可能性!?JPモルガンの原油価格の見通し

ロシア・ウクライナの終局はまだまだ見えないようです。戦況を伝えるニュースは数時間おき、時には数分おきにアップデートされ、原油・天然ガスの価格もそれにともない激しく変動し続けています。

ウォーレン・バフェットは原油株を買い続け、あらゆる大手メディアで原油価格のさらなる上昇が予告されています。原油価格の見通しを大まかにまとめると110~150ドルあたりが主力となる中、7月2日、JPモルガンは最悪のシナリオではWTIが380ドルまで高騰する、と衝撃の価格予想を発表しています。

なぜ、そこまで高騰の可能性があるのか、参考までにチェックしておきましょう。

原油価格380ドルの可能性

欧州、米国を中心としたロシアへの経済制裁は日々激しさを増しています。日本を含め、G7国では新たにロシア産原油・天然ガスにおける制裁を追加する動きが強まっています。

そこで、JPモルガンは

このままロシアへの制裁が加速するようであれば、ロシア側の報復として意図的な減産が実施される可能性があり、最悪の場合は380ドルまで原油価格は高騰する

と予想しています。

参照:原油380ドルも~Bloomberg

もし、ロシアがあえて自ら原油・天然ガスの減産を実行するとすれば、最終的に世界全体のエネルギー供給量はこれまでにないレベルに低下していくとの見方が持ち上がっているのです。

欧州・米国がロシア産エネルギーの輸出禁止に挑む背景には、あくまでも、ロシアの生産量にサウジや中東の増産が前提となっています。

つまり全体の供給量がほどよく増加されると仮定した場合にのみ、強気の制裁も意味を成すというわけです。

供給量が増えない状況において、制裁のみを強化するならば、さらなるインフレ・エネルギー高を呼び起こし、欧米は自らの首を絞めるだけの結果となり得るのです。

インフレ・エネルギー高が進むだけならまだしも、ロシア・ウクライナの激戦もさらに悪化するというWの悲劇をもたらすことになります。

原油価格の推移

では、ここ数年から最近の原油価格の推移を、この機会に確認しておきましょう。

出典:Brent Crude oil price and US dollar index – EIA

上図チャートは、Brent原油とドルインデックスの価格推移を表したものです。2017年~2021年にかけては、原油とドルインデックスは相反する関係にありつつも、上昇・下降のタイミングが重なる局面も多いことがわかります。

  • 2017年:原油(40ドル~60ドル) ドル(90ドル~95ドル)
  • 2018年:原油(40ドル~70ドル) ドル(95ドル前後)
  • 2019年:原油(60ドル~70ドル) ドル(95ドル~100ドル)
  • 2020年:原油(-価格~40ドル) ドル(90~100ドル前後)
  • 2021年:原油(60ドル~85ドル) ドル(85ドル~95ドル)
  • 2022年:原油(80ドル=120ドル) ドル(95ドル~105ドル)

となり、利上げによるドルの上昇率に比べて、ウクライナ・インフレからくる原油価格の上昇率には、かつてないほどの高いボラティリティが伺えます。

出典:Daily Brent crude price change – EIA

ドル高が進んだことによって、対ユーロと対ドルで原油価格を比較した場合には、対ユーロにおける原油価格の高騰が際立っています。

2022年以降の原油価格の高騰は、ロシア・ウクライナ問題が要因となっていることはいうまでもなく、加えてOPECプラス・サウジアラビアの増産見送りがもう1つの大きな要因となっています。

OPECプラスが増産を控える理由については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

なぜ原油価格が高騰しているのか?OPECプラス・サウジアラビアが増産しない理由と今後の可能性

JPモルガンの380ドルの見解とは?

新たに発表されたJPモルガンの原油価格予想においては、G7国が打ち出した「Oil Price Cap」が最悪の事態を招きかねないとの見解です。

では、JPモルガンの原油価格予想がどのような見解のもとに立っているのか、具体的に見ていきます。

G7国が打ち出した「Oil Price Cap」とは

6月27日~28日にかけて開催されたG7ミーティングにて、G7国は原油価格に上限を設ける「Oil Price Cap」という案を打ち出しています。

今回のG7が打ち出した「Oil Price Cap」とは、

市場での取引価格とは別で、制裁の意味を含めて「ロシア産原油に限り現在の価格の半額近くに上限を設定する」方針のことをいいます。

この案に対して、ほとんどの原油アナリストは「これは逆効果・裏目に出る」「非現実的」「不可能」などと反対に近い警告の意見を述べています。

参照:原油380ドルも~ Bloomberg

参照:The G7 is considering~ CNBC

500万バレル程度の減産はロシアの許容範囲?

JPモルガンによると、ロシアにとって500万バレル程度の減産であれば、許容範囲内であってロシア経済への打撃も少なくとのこと。反面、エネルギー事情がかなりタイトな欧州・米国、その他アジア圏にとっては500万バレルの減産はかなり痛手になるとの見解。

ロシアがあえて、欧米への報復を理由に減産するとすれば380ドルあたりまで原油価格は高騰する見通しがあるとしています。

もし、「Oil Price Cap」が実行されなかった場合でも190ドルまでの高騰は十分に考えられると、JPモルガンは見ています。

ちなみに、G7の「Oil Price Cap」案が持ち上がる以前の価格予想は185ドルでした。以下の記事では、EIAなど大手機関による原油価格予想を公開しています。こちらも合わせて参考にしてみて下さい。

原油価格は今後どうなる?2023年~2023年 プロの原油価格予想!

まとめ

JPモルガンにしても、ゴールドマンサックスにしても、いかに大手投資機関であるとしても価格予想が結果として外れることはよくあることです。どの程度考慮すべきなのかは各自の判断によるのですが、ひとこと付け足しておけば、JPモルガンはすでにロシア・ウクライナ問題が生じる以前から180ドルの予想をしていたことです。

当時の原油価格はまだ40ドルぐらいで、そのあとコロナ回復やロシア関連にて実際に130ドルを超える場面も出てきているのです。現在の原油価格は106ドル~113ドルあたりで推移、状況に応じてかなり激しい値動きが予測されるものの、あながちJPモルガンの予測も行き過ぎではないと見れる部分もあるのです。

ただし原油投資は、ハイリスクを代表する銘柄となるため、十分に注意する必要があります。あくまでも1つの材料として、投資戦略に取り入れて頂ければと思います。

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