原油価格を見たり、原油投資を検討したりする時に気になるのが原油商品の種類です。WTIやBrentといった原油の商品名がよく出てきますよね。
原油価格が上がったとか下がったとか言われているのは、いったいどの原油を目安にしているのでしょうか?
国内ではドバイ原油が指標として使われることもあります。米国産原油のことをシェールオイルと呼ぶこともあり、それぞれどう違うのか疑問に思う方は多いでしょう。
今回は、原油先物やCFDで一般的に取引されているWTI・Brentなど原油の種類・特徴、ドバイ原油やシェールオイルについてもわかりやすく解説していきます。原油に興味がある方はぜひご一読下さい。

原油といえば、WTIとかBrentとかよく目にするけど
いったい何を意味しているの?

簡単にいうと、WTIは米国で産出されている原油。
Brentは欧州・英国で産出されている原油のことです。
では、それぞれの特徴や違いを見ていきましょう。

WTI(ダブリュー・ティー・アイ)とBrent(ブレント)は、原油の世界3大指標といわれる原油商品の名称です。
原油の世界3大指標は、
- WTI原油 → 米国の原油指標
- Brent原油 → 欧州の原油指標
- ドバイ原油 → 中東の原油指標
があります。
まずは、WTIとBrentから解説していきましょう。
WTI原油とは、West Texas Intermediate(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)を略したもの。米国・テキサス州で生産されている原油のブランドのことです。簡単にいうとテキサス産の原油ですね。

テキサス州以外でも、ルイジアナ、ノースダコタでWTIが採掘されています。
例えば、お米にも秋田産、新潟産、岩手産などがあってそれぞれ特徴がありますよね。それと同じようなイメージで、産地によって原油の性質が若干変わってきます。
WTIは、Light Sweet Crude Oil(ライト・スイート・クルードオイル)とも呼ばれていて、原油の中でもとくに「軽くて」「甘い香り」がするのが特徴です。
原油が軽いというのは・・・ 質量・容積に対する密度が薄い希薄だといういうことです。比較的にサラサラしていて扱いやすくガソリンなどの精製品に適していることを表しています。
API比重

原油の密度は「API Gravity(API比重)」という数値で測定されていて、WTIは40~50ぐらいで軽い原油なのです。50以上になると、潤滑油・エンジンオイルなどの精製品を指しています。
原油が甘いというのは・・・ もちろん、原油を味わうわけではありません。ここでいう甘さとは「硫黄の含有量(Sulphur Level)」が0.24%と少ないことを表しています。
硫黄含有率

硫黄の含油率が多くなるほど、ドロドロと液体が重くなり香りに酸味が出てくるのです。サラッとして香りに癖がない軽い原油を「甘い」と表現します。
米国原油の中ではWTIが最も生産量が多く、流動性が高いことが大きな特徴です。世界中の取引においてWTIの価格が指標として使われているのです。
- WTIの価格が下がる → 世界中の原油取引の価格が下がる
- WTIの価格が上がる → 世界中の原油取引の価格が上がる
というように、今だといくらなら原油価格の相場なのかWTIの価格動向が目安になっています。
Brent原油とは、英国とノルウェーの間にあるBrent Oilfield(ブレント・フィールド)という北海の区域で産出される原油のブランドです。英国とノルウェーがおもな産油国となります。

Brent原油は、北海ブレント、北海原油、UKオイル、などとも呼ばれていて、欧州における原油取引の目安にされています。北海周辺の原油開発が進んだため、近年ではフォーティーズ(Forties)、Osberg(オスベルグ)、エコフィスク(Ekofisk)などの海域も含まれています。
WTIよりは重めの原油ですが、中東産よりは軽めになることがBrentの特徴です。
オフショアで採掘されているため、海上輸送の利便性が高く、アジア・アフリカと多方面に対応していることが強みです。加えて、欧州・英国向けにはパイプラインで輸送されています。
WTIとBrentの違いをひとことでいうと・・・産地の違いですね。WTIは米国産、Brenntは北海産となり、「重さや甘み」が多少異なるということです。
もう1つ異なる点は価格差です。WTIとBrentはほぼ連動して価格が動いていきます。Brentの方が8ドル程度高くなります。
WTI・Brent 日足チャート

1980年~2009年にかけては、ライトでスウィートなWTIは入手が困難だったためブレントよりも1~2ドル高かった時期もありました。米国シェールオイルの登場によって供給量が一気に増えたため、近年ではブレントよりWTIが安めになっているのです。
時期によって、WTIとBrentの格差が広がったり縮まったりします。
さらに、WTIとBrentでは上場している市場も異なります。WTIはNYMEX(NY商業取引所)に上場、BrentはICE(インター・コンチネンタル取引所)とNYMEXに上場しています。
WTIとBrentの価格は相互に影響を与え合っています。どちらの価格のほうが重要なのかは一概にはいえません。
市場がオープンする時間帯からいけば、欧州の方が先にオープンしますのでブレントの価格がWTIに影響を与えることもあります。WTIの価格は翌日のドバイ原油(アジア市場)に影響を与え、ドバイ原油の価格がBrentを左右していきますので、結果的にはBrentはWTIの流れを受けていく傾向にあります。
石油大手メジャーの現物取引、大手ヘッジファンド・金融機関など多様な市場参加者を有するWTIは、世界最大クラスの巨大市場です。世界指標としての役割はBrentよりも大きいといえるでしょう。
WTIとブレントに関する参考資料
参照:Types of Crude Oil – Kimray.com

原油に投資する方法を知りたい方は
こちらの記事を参考にしてみて下さい。
原油・天然ガスに投資する方法は?WTI 株式 ETF CFD エネルギー投資の始め方

じゃあさ、ドバイ原油ってよく聞くけど
何なの?WTIとどう違うの?

ドバイ原油はアラブの原油のことです。
ドバイ原油の特徴や、WTIとの違いを見ていきましょう。

世界の原油市場は大きく3つに分けることができます。
- 北米 → 米国、カナダなどの原油(WTI)
- 欧州 → 英国、ノルウェーなどの原油(Brent)
- 中東 → アラブ首長国連邦、サウジアラビアなどの原油(Dubai/ドバイ)
日本をはじめ、アジア圏でおもに取引されているのが中東の原油です。中東ではドバイ産のドバイ原油、オマーン産のオマーン原油などがあります。ドバイ原油は中東原油の指標となる原油の種類です。
ドバイ原油とは、アラブ首長国連邦の首都ドバイで採掘・産出されている原油のことです。日本の原油供給の3分の1が中東産となり、ドバイ原油の価格とガソリン代は密接な関係にあります。

ドバイ原油は、制限が多く自由に取引できない中東原油の中では、唯一スポット取引が可能なため指標として使われるようになりました。
NYが本社のプラッツ社によって、ドバイ原油の価格が計算・公開されています。国内でも、プラッツ・ドバイいう先物商品が取引されています。
品質は中質~重質高硫黄原油となり、重量がありドロドロとした酸味がある原油です。重質原油は基本的に軽質よりも不純物が多くなるため、ガソリンの精製に手間・コストがかかるのが特徴です。
火力発電や航空機・船舶などの燃料に適していて、大量に長期契約にて取引されるのが中東産の強みとなっています。
参照:石油産業の構造 – Sustainable Japan
ドバイ原油の産出量はWTIやBrentに比べると少ないため、オマーン産原油の取引価格との平均値が出される仕組みになっています。
産出量でいけば、中東では実はサウジアラビア産やイラク産が圧倒的に多いのです。ただ、ドバイ原油以外の中東産は、各国と輸送先との交渉による長期契約となるため、バレルあたりの価格の算出が難しくなります。透明性が高いドバイ原油が指標に使われているのです。

中東を代表する原油は、ドバイ・オマーン以外では、サウジアラビア産、イラク産、イラン産、クウェート産の原油が有名です。
ドバイ原油がWTIやBrentと異なるのは産地と原油の質です。ドバイ原油は中東産で中質~重質原油となり、灯油や重油などの精製に適しています。一方、WTI・Brentは欧米産の軽質原油でガソリンや潤滑油向けです。
中質~重質がメインとなるドバイ原油はWTI・Brentよりも安くなる傾向にありますが、状況によってはドバイ原油の方が高価になることも。価格の連動性は非常に高くなります。

また、WTIやBrentがスポットや先物で世界中で自由に取引可能なことに対して、もともとのドバイ原油は全量スポットのみです。プラッツ社の「プラッツドバイ」がTOCOM(東京証券取引所)とSGX(シンガポール取引所)、NYMEXに上場しています。

原油といっても、いろいろな種類があるのですね。
以下の記事ではガソリンの種類をご紹介しています。
こちらも、合わせて参考にして下さい。
原油と石油の違い ガソリン、軽油、重油など燃料の種類を一覧で解説!

そして、もう1つ気になるのがシェールオイル。
シェールオイルも先物やCFDで取引できるわけ?

シェールオイルとは、米国原油を総称した呼び方のことで、
商品や銘柄があるわけではないのですね。
では、最後にシェールオイルについて詳しく見ておきましょうか。

シェールオイルは、シェール方式という採掘方法で分類した場合の原油の名称です。米国がおもなシェールオイルの産油国であることから「シェールオイル = 米国原油」の意味合いを持っています。
米国はかつては、世界トップの原油開発者・輸入者だったのですが、2013年にシェールオイル開発で成功して以来、産出国としてトップにランクインするようになったのです。
米国が2013年にシェールオイルで成功した出来事を「シェール革命」といいます。
米国以外でも、カナダなどシェールオイルを採掘する国があります。どの国で採掘されたとしても、シェール方式の原油はシェールオイルと呼ばれています。

シェールオイルとは、地中深くにあるシェール層(岩のかたまり)から採掘された原油の名称です。日本語ではシェール層のことを頁岩(けつがん)層と呼んでいます。
以前から、シェール方式の原油採掘方法は知られていたのですが、深さ2~3kmぐらいの地点から原油を汲み上げるのは容易でないため、あまり発展していませんでした。
砂利などを含む高圧の水で岩盤を粉砕する手法が米国にて確立され、2005年ごろから本格的な開発・生産が始まったのです。
- シェールオイル → 採掘方法で分類した原油の名称
- WTI → 米国原油の特定のブランド(テキサス州の原油)
シェールオイルは採掘方法の名称。WTIは数ある米国原油の中で最も代表的なブランド名。

米国原油の総生産量のうち、約70%以上をシェールオイルが占めています。大まかには、「シェールオイル = 米国原油 = WTI」と見なされています。
WTIの価格を知ることは、米国原油の価格相場を知ること。WTIが世界の原油取引の指標となっていますので、ひいては、WTIの価格を知ることで世界の原油価格の相場を知ることにつながるのです。
2013年のシェール革命以来、米国は天然ガスでも世界上位の産油国となりました。米国はシェールオイルとほとんど同じ手法にて、シェール層から天然ガスも採掘しています。

シェールガスとは、シェール方式で採掘された天然ガスのことです。
同じ天然ガスでも、米国産と中東産・ロシア産などを区別するために、シェールガスと呼ばれることもあります。
余談ですが、実はこのシェールガス(米国の天然ガス)とロシア産天然ガスとの主導権争いが、ロシア・ウクライナ戦争の要因ともなっているのです。

米国とロシアの天然ガス争奪戦に
関心がある方はこちらの記事をどうぞご覧ください。
ロシア・ウクライナ対立の背景にある天然ガスとは?天然ガスをめぐるロシアと米国の争奪戦
WTIやBrentは、商品先物またはCFDにて売買することができます。
商品先物とは
デリバティブ、オプショントレードとも呼ばれている金融商品のことで、数か月先の原油を予約売買していく取引方法です。レバレッジをかけて資金以上が取引できる仕組みになっています。期限内で売買する必要があり、仕組みや用語が複雑なため上級者向けです。
原油先物でおすすめの証券会社
WTIやBrentを取引するなら、CFDがおすすめです。CFDとは、FX取引のようなもので、実際に上場している商品を取引するのではなく、先物やスポットの「買値」と「売値」を売買して差額で利益を得ます。仕組みがシンプルで少額取引も可能なため初めてのエネルギー投資にうってつけなのです。
CFDでおすすめの証券会社

CFD取引について詳しく知りたい方はこちらから。
原油CFDで簡単にエネルギー投資!原油CFD おすすめの国内FX業者・海外FX業者
CFDでおすすめの証券会社
原油価格が上昇すると、ガソリン代が上がります。ガソリン代が上がることで、野菜や食品などにも流通コストやその他燃料費が加算されて物価が値上がりしていくのです。さらに物価が上がることで、企業活動が縮小、景気低迷につながったりします。
原油価格の指標となるWTIは世界を動かしているといっても過言ではないのです。
ガソリン代や物価の動き、企業の業績が気になるときには、WTI原油の価格動向をチェックするとヒントが得られますね。これから、原油投資を検討している方も、どの銘柄を取引するとしてもWTIの価格が非常に重要となってきます。
WTIの価格をチェックすることで、世の中の動きがちょっと見えてくるというわけなのです。早速、WTIがいくらで動いいるのかチャートをチェックしてみましょう。

